ノーベル経済学賞、今年も日本人の獲得ならず 英語が高い壁、日本発の理論も少なく
ノーベル経済学賞は、これまで日本人が選出された事例がない。日本人では毎年、米プリンストン大の清滝信宏教授(69)が有力視されるものの、今年も受賞はならなかった。米国の経済学界が「主流派」とされ、論文を作成する英語力の壁もある。そもそも、日本発の経済学理論が少ないことも、日本人が獲得できない背景にあるとされる。 スウェーデンの王立科学アカデミーは14日、2024年のノーベル経済学賞を、米マサチューセッツ工科大(MIT)のダロン・アセモグル教授(57)ら3人に授与すると発表した。 現代経済学の主流派の多くが米国の有名大学を拠点に活動しているため、ノーベル経済学賞も米国主流派の系譜を引く学者が受賞するケースが多い。論文を積極的に発表し、その論文を他の研究者が引用するという経済学賞の獲得に必要な〝好循環〟が、米国を拠点に活動する研究者にはある。 しかし、日本人は、米国の主流派に大きな影響力を持つ研究者は少ないとされる。英語の壁もあって論文の執筆や人脈作りが難しく、受賞の条件を満たすような〝好循環〟が生まれにくいとの見方がある。 そういう意味では、清滝氏は米国に足場を持つこともあり、毎年のように有力候補にあげられる希少な存在といえそうだ。 また、2014年に死去した宇沢弘文・元東大名誉教授も数理経済学の業績で受賞に近いとされた。ただ、米国から日本に帰国後の1970年代、社会運動にのめりこみ、主流派に批判的となったことが受賞を難しくしたといわれる。 そもそも、日本のある大学教授(経済学)は「優れた経済理論を開発し実際に生かそうという機運が必要だが、本当にそれを実践できる日本人は少ない」と指摘する。日本人の受賞を目指すのであれば、研究者が米国で腰を据えて活動できたり、日本発の経済学理論を生み出せたりできる環境整備が必要といえそうだ。