約2.7兆円「世界最大のスシ市場」のアメリカで攻勢 「寿司とインド」が商社・双日のリテール事業を左右する
2023年には冷凍マグロ加工販売のトライ産業を買収した。同社は冷凍マグロの仕入加工や販売などの一貫体制を確立し、国内市場シェア約15%を占める。 国内収益基盤の確立と海外展開を見据えた商材の充実は着実に進みつつある。今後は実際に海外市場を開拓していくステージだ。 ■「低すぎる」リテール事業の資本効率 一方、水産事業が属するリテール・コンシューマーサービス本部は、正念場を迎えている。 2026年度までの中期経営計画では、投下資本に対する基礎的営業キャッシュフローの割合(CROIC)を前中計平均の3.1%から6%に引き上げるミッションが課せられた。金属・資源・リサイクルなど7つある本部の中で、最も大きく資本効率を引き上げなければならない。
双日の植村幸祐社長は「伸ばすというより、今が低すぎる。われわれは好んで収益性が低いところに投資しているわけではない。6%まで持っていかなければ投資した意味がない」と発破をかける。 水産事業の純利益は中計最終年度の2026年度に40億円とする。直近実績の2023年度は12億円だったので、約3.3倍に伸ばす計画だ。 リテール・コンシューマーサービス本部の利益伸長を左右するカギは、水産事業だけでない。インドなどアジア圏での流通事業拡大だ。
足がかりとなるのは、2022年から出資参画するインドのスタートアップ企業インテリジェント・リテールだ(2023年に追加出資)。卸売り事業を営む同社は同業向けに小売店からの受注、配送、在庫管理などを一元管理できるシステムを開発した。メーカーとリアルタイムの情報共有ができ、タイムリーな販売状況の把握や配送管理が可能になる。 「大手メーカーからの商品取り扱いがドミノ倒しのようにこのシステムに切り替わっている」(村井氏)という。双日はこのスタートアップをテコに、インドの食品・消費財の流通網に食い込んでいく戦略だ。