無観客試合から1年 浦和はどう変わったか
差別的内容の横断幕をサポーターが掲げた問題への処分を受け、浦和レッズがJリーグ史上初の無観客試合、清水エスパルス戦を行ってから、3月23日でちょうど1年。サッカー界のみならず日本のスポーツ界全体に衝撃を与えた「無観客試合」という処分を経て、浦和レッズはこの1年、どのような方策で再発防止に取り組んできたのか。クラブはどう変わったのか。 事の発端は、昨年3月8日に埼玉スタジアムで行われた浦和レッズ対サガン鳥栖戦で、浦和サポーターが差別的内容と取れる横断幕を掲出したことだった。Jリーグは、国際サッカー連盟(FIFA)が差別撲滅の方針を強く打ち出している昨今の流れを受けて素早く動き、同3月13日に裁定委員会を開いて処分を決定。浦和の直近のホームゲームとなる清水戦を無観客試合とするという制裁を下した。 同3月23日に行われた浦和対清水戦。観客のいないスタジアムで、ピッチに立つ22人の声だけが響き渡る異様な光景の中、1-1で試合を終えた選手たちは、「こういう試合は二度とやりたくない」と口々に言った。楽しみにしていた観戦機会を奪われた人々の落胆も想像に難くなかった。経済損失は2億円とも3億円とも言われた。 有形無形の損失を出すことになった、あるいは与えてしまうことになった浦和は、この1年、様々な議論を交わしながら、クラブとして変革していくという姿勢を打ち出してきた。 まずは、このような問題が起きた原因について、「クラブとサポーターとの関係において、自主性とルールのバランスが崩れていた」と判断。浦和サポーターの魅力の一つである熱狂的な応援を尊重しすぎたがゆえに、ダメなものにもダメと言えないような土壌を形成してしまったことを猛省した。 これを踏まえ、人事異動や担当替えといった内部改造はもちろんのこと、シーズンチケットホルダーを対象にしたミニ集会を昨年だけで約20回開催。サポーターとのコミュニケーションを取りながら双方の関係のあり方を見直していった。ミニ集会は今年も継続中だ。 差別撲滅については、2009年から提携を結んでいる国連機関『国連の友アジア―パシフィック』と、5年計画のアクションプログラムを昨年4月から開始した。このプログラムでは、差別撲滅に向けたFIFAのルールや方針について、選手や来場者の意識を高めるような啓蒙活動などを行っている。 また、スタジアム内における応援ルールについては、昨年の出来事の発生後からすぐに、横断幕や大旗などの掲出物を使った応援を禁止。「安全なスタジアムづくり」という目的に向かい、第一段階として厳しく引き締めるという方針から再スタートを切った。