マイナ保険証「便利」VS「面倒」 岩手県内利用率17%台どまり 本格移行の現状と課題
岩手めんこいテレビ
12月2日からマイナ保険証の本格運用が始まった。従来の保険証は新規発行が停止されたが、県内での利用率は17.25%にとどまっている。 医療現場や街頭での取材を通じ、この新しい制度の現状と課題を探った。 マイナンバーカードは3年前から健康保険証として使えるようになっており、厚生労働省などが説明するマイナ保険証の利用メリットは多岐にわたる。 本人の同意があれば、過去の処方薬の情報を医師や薬剤師に正確に伝えることができ、より適切な診療や投薬につながる可能性がある。また、高額療養費制度を利用する際、手続きなしで限度額を超える支払いが免除される。さらに、緊急搬送時に救急隊が過去の医療情報を正確に確認できるという利点もある。 しかし、実際に使用している人からは「そういうメリットがあるのは実感できていなかった」という声も聞かれる。こうした実感の薄さが、低い利用率の一因となっているのかもしれない。 岩手県内のマイナンバーカードの保有率は10月時点で75.9%に達しているが、マイナ保険証の利用率はわずか17.25%にとどまっている。(総務省調べ) この数字が示すように、マイナ保険証の普及はまだまだ進んでいない状況だ。 盛岡市青山のはしもと眼科クリニックでの取材では、同クリニックでのマイナ保険証の利用率は約20%だという。 橋本真生院長は「比較的若い方々が利用されているというのが現状」と話す。 本格移行翌日の3日の午前中に来院した64人のうち、マイナ保険証を利用したのは19人だった。 街頭インタビューでは、マイナ保険証に対する様々な意見が聞かれた。 「使っている。共有がスムーズにできるのがいいところ(20代)」と肯定的な声がある一方で、「使っていない。情報が全部漏れるのは嫌(60代)」、「いろいろ面倒くさいのは嫌い(80代)」といった否定的な意見が聞かれた。 また、マイナ保険証を登録しているにもかかわらず、従来の保険証を利用しているという人は「顔の認証とか合わなかったり(すると面倒)(80代)」「病院行っても従来の保険証で間に合う。いつもの通り保険証の方が楽、サッと出せるから(80代)」といった理由が挙げられた。 厚生労働省ではマイナンバーカードは「他人には悪用できない仕組みになっていて情報が芋づる式に漏れることもない」と説明しているが、マイナ保険証の導入に伴い、様々なトラブルも報告されている。 岩手県保険医協会が会員の開業医を対象に行った調査では、75%の会員が2024年5月以降にトラブルがあったと回答している。 特に多かったのは、名前や住所で対応していない漢字が黒丸で表記されるというトラブルや、資格情報の無効がある場合だ。 例えば、職場の健康保険から国民健康保険に切り替わった人の情報が反映されていないなどのケースが報告されている。 こうしたトラブルに備え、橋本真生院長は「従来の健康保険証も持参すると良い」とアドバイスする。さらにマイナポータルを活用する方法も提案する。 はしもと眼科クリニック 橋本真生院長 「従来の保険証を持っていれば保険証で(情報を)確認する。(オンライン窓口の)マイナポータルの中にも自分の保険の資格情報を表示する機能がありダウンロードして保管することもできる。そういうものを持っていていただくと資格確認ができるので、そういった準備はしたらいいと思う」 そのうえで橋本院長はトラブルの修正を図りながら徐々に移行できると良いのではと語る。 はしもと眼科クリニック 橋本真生院長 「最長で2025年の12月1日までは現行の保険証も使える。マイナンバーカードを持っていない方は資格確認書でかかることができますから、少なくともここ1年くらいの間は今まで通りの対応でいいんじゃないかと。その中で少しずつマイナ保険証・マイナンバーカードの理解が進み活用に結び付いていけばいい」 橋本院長が話していたように、マイナ保険証を持っていない人でも、従来の健康保険証は有効期限が切れるまで、または最長で2025年12月1日までは利用可能だ。 それ以降は「資格確認証」があれば保険診療を受けられる。この資格確認証は、マイナ保険証を登録していない人に自治体や勤務先から送られてくるもので、事前の申請は不要だ。ただし、資格確認証にも最長5年間の有効期限があるため注意が必要だ。 新たにマイナ保険証を登録するには、まずマイナンバーカードを取得し、健康保険証として登録する必要がある。登録方法は3つある。 1. 医療機関や薬局にあるカードリーダーから行う 2. パソコンやスマートフォンからマイナポータルにアクセスして行う 3. セブン銀行のATMで登録する 保険証を利用する当日でもその場ですぐに手続きが可能だ。 マイナ保険証について、県は「安全性に不安を感じる人もいるが、住民が安心して医療を受けられるよう、国や市町村と連携して制度の周知や状況の把握に努めたい」としている。
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