疎開から80年 上皇陛下、思い出の地「日光」へ
控えられた事前公表
令和もすでに6年となり、生前退位された上皇陛下は90歳を迎えられ、上皇后美智子さまは89歳になられた。お二方の大変お元気なご様子を、喜ばしく思うのは言うまでもない。 これまでも、二重権威を避けるため公の場に姿を現すことを控えてこられた上皇ご夫妻。2024(令和6)年の「春の園遊会」にも、そのお姿はなかった。時折、私的なご旅行などで、そのお姿に接することを楽しみにしている人もおられることだろう。残念ながら、今回の日光ご訪問は、事前に宮内庁から発表されることはなかった。理由は明らかにされていないが、ご高齢の上皇ご夫妻を静かに見守っていただきたい、とする側近らの配慮があったのだろうか。 日光へ向かわれた日は、あいにくの雨模様だったこともあり、普段は観光客でごった返す東武鉄道の浅草駅前も静まり返っていた。目立ったのは、スーツ姿の警察関係者の姿だった。東武日光駅前も同様に、雨模様ゆえ観光客の姿はまばらで、上皇ご夫妻をお出迎えするという歓迎ムードは、どこにもなかった。駅前のガソリンスタンドの店主は、ご到着時間の寸前まで知らされてなかったと言い、土産物店の店員も事情を把握していない様子だった。ある地元の人は、「数日前に警察による警備訓練が行われていたが、いつお見えになるのかと聞いても、"答えられない"と冷たくあしらわれた」と話す。今までは事前に情報が伝わり、ご到着の様子をひと目見ることができたのに、今回はなぜそのような"塩対応"になってしまったのか。とはいえ、行く先々の歩道上には、カラーコーンで囲われた「奉迎場所」と呼ばれる"お出迎え場所"が用意されていたのだが。
念願の日光
平成の時代、天皇となられた上皇陛下が日光を訪れたのは、23年前の2001(平成13)年7月にまで遡る。実は、その前となる1996年(平成8)年6月にも美智子さまと紀宮さま(現・黒田清子さん)とともに訪れる予定だったが、上皇陛下が風邪をひかれたため中止となった。その後も、戦後70年の節目である2015(平成27)年、2016(平成28)年、2017(平成29)年と計画はされたものの、自然災害の被災者へ配慮した取りやめなど、中止を余儀なくされてきた。そして、今回ようやく念願が叶ってのご訪問となった。