プロ野球、春季キャンプからオープン戦への流れはこうなっている。
とにかく実戦の機会がほしい
従来は、春季キャンプでは「選手をみっちり鍛え上げる」ことを目的にしていたが、今の選手はすでに身体が出来上がっていることが多いので「投内連携」「サインプレー」などの「チーム全体で練度を上げる練習」がメインになる。 既に選手が仕上がっている今の春季キャンプは、監督やコーチにとっては「野手の各ポジション、打順とローテーション、救援投手陣」を決めることが主な目的になっている。 だから、練習試合、対外試合を少しでも多く組みたい。そこで選手の動きをしっかり見極めることが最重要になって来る。 かつて春季キャンプは広島県、高知県、福岡県、鹿児島県など主として西日本の多くの地方で行われていたが、今は、沖縄県、宮崎県に集中している(一部高知県でもやっている)。それは「できるだけ多くの対戦相手がいるところでキャンプを張りたい」という球団の意向によるところが大きい。 また沖縄では、石垣島(ロッテ)、久米島(楽天)など離島でもキャンプが行われているが、こうした離島でのキャンプの日程は短くなり、沖縄本島に拠点を移すことが多くなっている。これも「対戦相手」を求めてのことだ。 さらに宮崎県、沖縄県には韓国プロ野球(KBO)や台湾プロ野球(CPBL)の球団もやって来る。これも「対戦相手」を増やすうえでメリットがある。
重要な観光資源である春季キャンプ
コロナ禍で一時期、客足が遠のいたが、2022年以降、春季キャンプの人気は、年々高まっている。 春季キャンプの魅力は何といっても「ファンと選手の距離が近い」ことだろう。練習施設から移動の途中で、サインに応じる選手もいる。ただ、あまりにも多くの選手が集まると練習に影響が出るので、球団によっては「選手がサインをする場所」を決めている場合もある。 またチーム関連グッズの売店も設けられ、新デザインのユニフォームやグッズを販売している。最近人気なのは「キャンプ限定グッズ」だ。 また、沖縄、宮崎の一軍春季キャンプでは、地元名産品やグルメなどの売店がたくさん立ち並び、多くのお客を集めている。 宮崎県、沖縄県のキャンプ施設では、前年の秋から「メイングラウンド使用禁止」にして、春季キャンプのためにグラウンド整備をしている。スポーツ振興課の職員が芝刈りをしたり、整地に精を出したりしている。地元にとっては春季キャンプは非常に大きな「観光資源」になっているのだ。
オープン戦から始まる競争
3週間から1か月の「春季キャンプ」を経て、プロ野球は「オープン戦」に入る。オープン戦は、正式には「春季非公式試合」と言われる。 練習試合と異なり、オープン戦は、NPBの審判が派遣され、公式記録員が記録を録り、公式戦と同様の体制で行われる。またオープン戦の記録はNPBの公式サイトで公開されている。 ただ、公式戦は「支配下選手」しか出場できないが、オープン戦は「育成選手」でも出場できる。三桁の大きな背番号をつけた育成選手が支配下選手に混じって、オープン戦に出て何度か支配下登録を勝ち取ろうと奮闘努力するのだ。 冬から春へ、プロ野球は春季キャンプからオープン戦へと進み「球春」が加速するのだ。