テント芝居劇団が最後の旅 「劇団どくんご」が長野県松本市で上演
全国各地を旅してテント劇場を立て、芝居を演じる―。鹿児島県出水市に拠点を置く「劇団どくんご」は、現在では他に類を見ない形で活動している。1980年代から長野県松本市内に何度も訪れ、今年は15日と16日に「夏型天使を信じるな」を上演した。今回が最後の旅といい、受け入れ準備をした実行委員会の人たちは特別な思いを込めた。 15日夜、あがたの森公園に予備校生や親子連れら約100人が集まった。テントは幅7メートル、奥行き9メートル、高さ3.5メートルほどで、客席最前列から舞台はすぐ目の前。出演者の掛け合いに子供からも笑いが起き、約2時間、観客は芝居の世界に浸った。 芝居が進むに連れて背景の幕が次々外され、最終的には屋外を舞台の背景にする演出もあった。予備校生の有賀大典さん(18)=岡谷市=は「テント芝居は初めて見た。出演者がそれぞれ思い付いたせりふをつなげていた。新感覚」と高ぶった様子で話した。 今回の旅公演は6人で31カ所を巡る。出演者の丹生(にう)みほしさん(41)=京都市=は「物語はなく、いろいろな場面が次々出てくる。面白かったり、悲しかったり。好きなように楽しんで」と話した。 実行委の一人、小林久夫さん(54)=朝日村=は「(演劇は)ある時期から劇場で見るものになった」と指摘する。かつては地域を巡り、宗教的な要素を含むものもあった。人が行き交う場所に存在した。1960年代からテント劇団の活動が活発に展開されたが、今では下火になった。 何をやっているか分からないけれど引っかかる。自分の姿に重なる。そんな場面や事柄が演劇で見つかるかもしれない―。演劇の自由や豊かさに、若い世代の目が向くことを願う。どくんごOBでもある小林さんは、最後の旅公演に寂しさをにじませる。「形は違うけれど次につなげていこうとしている人たちがいる。新しい形で続いていけば」と願っていた。
市民タイムス