中島翔哉がW杯アジア2次予選モンゴル戦へ貫く哲学「どんな相手にも常に最高の状態を作って臨む」
もっとも、パラグアイ代表とのキリンチャレンジカップ2019、ミャンマー代表とのアジア2次予選初戦に連勝した9月シリーズを振り返れば、中島はポルトの日々に関してこう言及している。 「すごくいい人ばかりで、自分のやりやすいようにプレーさせてもらっています。毎日がとても楽しいし、どんどん成長できるんじゃないかと思っています」 ミャンマー戦の舞台となった敵地ヤンゴンからポルトガルへ戻った直後の、先月15日に行われたポルティモネンセとのリーグ戦。後半アディショナルタイム8分にあげた劇的なゴールで3-2の勝利を収めた直後のピッチ上で、ポルトのセルジオ・コンセイソン監督が中島を一喝している。 衆人環視の状況で繰り広げられた異例の光景。指揮官のあまりの剣幕に、近くにいたチームメイトが間に入ったほどだった。コンセイソン監督は理由に関して多くを語らないが、後半27分から中島が投入された直後に2点のリードを追いつかれた展開と関係しているのでは、と現地では報じられた。 守備に対する中島の意識の低さを指揮官に厳しく指摘された、という推測もなかには存在する。監督と選手の間のデリケートな部分に触れてほしくない、というポルト側の方針のもとで「あまり話さないで」と、9月シリーズ時から変更点が設けられていたのかもしれない。
前述したように直近の公式戦2試合では先発していることからも、コンセイソン監督から落とされたカミナリは尾を引いていないはずだ。もしも報道通りに守備に原因があったとすれば、中島にとっては不得手な点を向上させ、成長していくうえでの歓迎すべき指揮官の一喝だったと言っていい。 「言葉にするとまたあれなので、そういうのはピッチの上で表現したいと思っています」 中島は言及できる精いっぱいの範囲で、ポルトでの日々をモンゴル戦へ、そして敵地ドゥシャンベへ舞台を移して15日に行われるタジキスタン代表戦へ還元したいと決意を表した。そして、不動の1トップ・大迫を欠く2試合への攻撃の再構築もこう見すえている。 「代わりに出る、力のある選手はたくさんいるので。それぞれが違う特長をもっているので、もちろん違いが出るとは思いますけど、それもサッカーのひとつだと思っています」 パラグアイ戦では複数の相手選手を引きつけてから、フリーとなった味方へパスを通してゴールの起点になった。ミャンマー戦では先制点となる、目の覚めるようなミドルシュートを豪快に叩き込んでいる。岡田氏の杞憂を吹き飛ばすかのように、個の力のなかにも柔軟に幅を設けている。 「相手のことを知ることはもちろん大事ですけど、相手が上か下かというのはあまり気にしていないというか、そういう見方があまり好きじゃないので。どんな相手にも常に自分の最高の状態を作って試合に臨み、自分のベストのパフォーマンスを出さなければいけないので」 最新のFIFAランキングで183位のモンゴル、115位のタジキスタンに対しても、31位につける日本のエースは気を抜かない。過去に五輪とワールドカップの両方で「10番」を託されたのは中村俊輔しかいない。2016年のリオデジャネイロ五輪に続いて3年後のカタール大会でも「10番」を背負い、史上2人目の存在になるための中島の挑戦が、いよいよペースを上げていく。 (文責・藤江直人/スポーツライター)