「あの子の“察知能力”はすごいものがある」楽天・星野仙一はなぜ田中将大に託したのか? 巨人を倒して悲願の日本一「マー君が無双してたあの頃」
夏の甲子園で味わった敗戦と後悔
田中には、“悔いや未練を残して終わりたくない”という思いがあった。7年前、斎藤佑樹の早実と対戦した駒大苫小牧の田中は、延長15回引き分け再試合で、先発マウンドに立たなかった。夏は胃腸炎で体調を崩しながらの投球を強いられたため、香田誉士史監督(当時)に「先発はどうか」と聞かれた時、「僕はいいです」と答えて、先発を辞退したのである。その結果、早実に先制点を許し、自身もリリーフ登板したが3失点。3-4で敗れてしまった。その時優勝出来なかった悔しさが、田中の中には今でも残っている。あの時も、体調さえよければ、と。だからこそ、第7戦も体調がよければ投げたいと思っていた。 香田監督はこう語っていた。 「あの子は自分の状態を冷静に分析し、決して無理をしてまで何かをやるタイプではありません。でも、こちらが何を願っているか、何をしてほしいのか。その“察知能力”には、すごいものがあるんです」 日本一がかかった地元・仙台で、星野監督が一番望んでいることは何か、多くのファンが待っているのは何かということを考えた末、自らマウンドに立つことを志願したのだった。そして、日本一の座を、三振で手に入れたのである。 星野監督は今シーズン、“決着”をつける場面では、必ず田中にマウンドを託してきた。リーグ優勝を決めた9月26日、西武ドームでの西武戦の9回。そして、日本シリーズ進出を決めた10月21日、Kスタ宮城でのクライマックスシリーズのロッテ戦の9回である。 1点差という痺れる場面での登板だった西武戦はともかく、ロッテ戦は、リードが3点もある中での登板だった。田中は試合後、「地元Kスタで監督を胴上げ出来たのが一番」と言って、自分のピッチングについては一切語ろうとしなかった。日本シリーズ第1戦が、5日後に迫っていた。 それでも星野監督は、クライマックスシリーズで初戦の先発を任せたように、日本シリーズでもやはり第1戦は田中に投げさせたい、という気持ちだった。佐藤コーチにポツリとこう漏らした。 「田中、中4日でいけるのかな」 佐藤は、直接、本人に訊くことにした。田中とのつき合いがもう5年になる佐藤は、田中の性格を熟知している。 「田中本人は、いつでも自分がより良い状態で投げたいというタイプ。名誉とか見栄とかはあまり気にしない。ただ、自分が口にしたことは、キッチリと責任を持ってやり遂げてくれる」
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