目の難病患う仲間に1打席…島根県立安来高野球部OBがサプライズ
カツよ、白球を追いかけた青春時代を思い出して――。島根県立安来高校の野球部OBたちが30日、目の難病を患って視力が低下した仲間のために始球式を用意し、1打席をサプライズプレゼントした。(門間圭祐)
元高校球児たちによる野球大会「マスターズ甲子園」県予選。試合前に打席に立ったのは、同校野球部に所属した岩田勝行さん(53)だ。目の難病「網膜色素変性症」を患い、現在は眼鏡をかけても十分な視力を得られない弱視の状態だという。
高校1年の秋の県大会、岩田さんは中日ドラゴンズなどで活躍した谷繁元信選手擁する江の川高校(現・石見智翠館)と準決勝で対戦。チーム唯一となる2点適時打を放つなど活躍したが、安来は2―3で惜敗したという。
高校卒業後は、大阪府のスイミングスクール運営会社に就職。インストラクターとして子どもに水泳を指導するなどしてきたが、30歳代半ばから徐々に視力が低下。40歳代後半に視力検査で最も数値の低い「0・1」となり、「子どもの命を預かるコーチを続けることはできない」と約3年前に退職した。現在は、第二の人生を始めようと、松江市内でマッサージ指圧師の国家資格取得を目指し、勉強を続けている。
サプライズに至るきっかけは、岩田さんの1学年先輩、中村剛久さん(54)(安来市)ら野球部OBが30年ぶりに集まった今年4月の飲み会。思い出話に花が咲く中、中村さんは卒業以来会っていなかった岩田さんの病気の進行を知り、「もう一度カツ(岩田さん)に野球の雰囲気だけでも味わわせてやりたい」とOBチームの監督や相手チームに打診し、了解を得た。
約30年前、江の川戦で先発した中村さんを支えたのが、岩田さんだった。初回、いきなり3点を奪われ、強豪校の実力を思い知らされた。それでも直後の攻撃で岩田さんが適時打を放ち、1点差まで追いついてくれたことで中村さんは気持ちを切り替え、その後は1点も与えなかった。「長距離砲として頼れる打者だった」