東京農大などが「環境賞」記念祝賀会 「土壌藻類を活用した自然回復」で受賞
「土壌藻類を活用した自然回復技術の実装」で第51回環境賞の最高賞である環境大臣賞受賞を記念した祝賀会が8月2日、東京都内のホテルで開かれた。包括連携協定を結び共同研究に当たった、東京農業大、建設コンサルタントの日本工営、健康食品製造販売の日健総本社の三者が主催し、約100人が出席。土砂災害被災地や荒れた斜面などで植生の復旧を促進する技術と実装が高く評価されたことを祝い、さらなる連携の強化と研究の進展をアピールした。 自然の植生が失われた場所では、植物の種子を吹き付けることで表土の浸食や流出を防ぎ植生を回復させる工法が、多く用いられている。受賞対象となった「土壌藻類を活用した自然回復技術の実装」は、種子の代わりに、広く分布している土壌藻類を吹き付けるBSC(バイオロジカル・ソイル・クラスト)工法を活用。風や鳥によって運ばれた種子で植生の回復を図る「自然侵入促進工法」に比べ、安価で容易に実施できると評価された。 祝賀会では、初めに東京農大産学官・地域連携センターの平山博樹センター長が「受賞の基盤となったBSCの開発と実証に関し、環境保全、社会実装の点で高い評価をいただいた。包括連携の成果が学生教育にも結びついている」とあいさつした。 続いて東京農大の江口文陽学長・理事長が「山の斜面や平地から土壌が流出し、海洋や河川の汚染、環境破壊が起きている。種子を吹き付けるなどの工法で緑化しているが、いろいろな場所に思いがけない種子を吹き付けてしまい、悪影響をもたらすこともある」と従来工法の課題を指摘。「糸状藻類は世界中にあり、生物相を崩さないので、あらゆる場所を緑化する中で環境保全に役立つ。世界に広がれば豊かな生活を導くことになる」とBSCの利点を強調した。 また、日本工営の金井晴彦社長は「さまざまな災害環境や地域活性化への弊社の取り組みをさらに加速させる」、日健総本社の森伸夫社長は「微細藻類で人の健康、地球の環境保全に貢献できるのは素晴らしいことと思う」と述べた。最新の研究事例として、ドローンによる散布や、ヤシガラで作ったネットを使いシカなどに踏みつけられないようにする試みなども紹介された。 最後に東京農大の上岡美保副学長が「BSCを用いた自然回復技術が高く評価され、受賞したのは、社会課題解決の大きな一歩。今後は三者がさらに連携し研究を深め、グリーンな社会の構築に貢献したい」と締めくくった。 環境賞は国立環境研究所、日刊工業新聞社が共催、環境省が後援し、環境保全や環境の質の向上に貢献し、時代の要請に応える優れた取り組みを表彰する。51回目の今回は、生物多様性の保全や脱炭素化、循環型社会の形成につながる技術や製品など72件の応募があった。環境大臣賞1件と、優秀賞1件、優良賞3件が選ばれ、6月に贈呈式が行われた。