7年ぶりの挑戦 第1部 明豊/上 「当たり前の徹底」を /大分
「目に見えない日ごろの生活の積み重ねが大事なのではないか」。これがたどり着いた結論だった。 昨年夏の大会。甲子園ベスト8のメンバーが主軸に残り、誰もが「優勝候補筆頭」と考えていた。しかし、準決勝敗退。部員たちはぼうぜんとしていた。「何が足りなかったのか」。新チームになってミーティングを重ねた。「練習が足りないのか」「もっと体力をつけた方がいいのでは」--。さまざまな意見が出たが、どれも敗退理由とは思えなかった。ならば今まで意識していなかったことをしよう。自分たちで生活の見直しを始めた。 表悠斗主将(2年)が掲げたテーマは「凡事徹底」だ。▽誰もいなければ電気がついていたら消す▽5分前には集合する▽脱いだスリッパはそろえる▽授業は寝ないで受ける--。徹底すべき“当たり前のこと”をみんなで列挙し、意識して守っていった。野球の練習には自信がある。では練習以外の時間の過ごし方に実力向上の鍵があるのではないか--。一見、野球とは関係ないことだったが、甲子園につながることだと信じた。 ◇ ◇ 「元気に声を出していかないと終わらないぞ」「それで全速力なのか!」。坂道ダッシュでヘトヘトになりかけている選手たちにコーチ陣から厳しい声が飛んだ。選手たちは「もう一丁!」と応え、さらに走り込む。 明豊の練習は「ザ・ノーマル」(川崎絢平監督)。基本を重視したもので、メニューも大きく変わっていない。だが、選手たちは異口同音に「練習の充実度は上がった」。豊田吉(はじめ)コーチ(25)は、これまで以上に「自分を追い込む」ことができるようになったとみる。生活の「当たり前の徹底」で「野球により集中できるようになったのではないか」 九州地区大会で本塁打を放つなど活躍した藪田源選手(2年)は「ごみがあったら拾うといった普通のことをしていると、それがなぜか自信につながっている」と話す。自分で人間的な成長を感じ、冷静に見直す余裕ができてきたと感じるという。そして「自分の打撃に足りないポイントを気づく力が上がった」 自分たちで自分たちの生活を律する。この数字に表れない意識の浸透は、確実に実力を底上げしていた。 × × 県勢が7年ぶりにセンバツに出場する。2校出場は10年ぶりだ。大舞台をつかみ取った明豊、大分の強さの背景に迫る。(第2部は戦力分析を行い、第3部ではチームを支える人たちに焦点を当てる予定です)