『降り積もれ孤独な死よ』灰川十三はいかにして殺人鬼となったか 初回に通じるエピソード
笠松将演じる謎の男が物語をかき回す?
作品中の2017年において、視聴者はようやく顔にあざのある男と健流を正面から認識することができた。花音の記憶どおり、二人は別の人物だった。だとしたら、前者はいったい誰なのか? 健流は灰川に血のつながった子どもがいると話していたが、彼こそが13人を餓死させた事件の真犯人であり、冴木と花音、鈴木(佐藤大樹)を襲ったのが、父への復讐を企てる成長した息子だったと考えることもできるだろう。 ミステリー作品では何を見せて何を隠すかが決定的に重要だ。本作は映像でわかる伏線やテーマと関連するエピソードを巧みに配置し、あるいはギリギリまで隠すことで視聴者の興味を引き付けることに成功している。雪のシーンでは、被写界深度の深い映像で叙情的で奥行きのある画面作りを行うなど視覚面でも飽きさせない。 それらに加えて、ちょっとした役でも「こんなところに」と目を引くキャスティングがされるのも見どころである。灰川の過去エピソードで登場した駿河太郎や吉村界人、また2017年時点で健流の母親役で出演した長谷川京子は、さりげない中に重要なピースの役割を担っていた。きわめつけは笠松将だ。帽子を目深にかぶり防犯カメラとインターホン越しの映像で輪郭をぼかし、健流本人かと思わせた。身体能力の高さを発揮しつつ、中盤以降、物語をかき回すことを期待したい。
石河コウヘイ