『虎に翼』脚本・吉田恵里香の心に刻みたい名台詞の数々 “声が残る”ことの大切さ
心に刻みたい寅子(伊藤沙莉)の「おかしいと声を上げた人の声は決して消えない」の台詞
昭和25年10月に言い渡されたある最高裁判決。尊属殺人罪についての判決の中で、反対意見を訴えたのは最高裁判事15人中2人だけ。そのうちの1人が穂高(小林薫)だ。寅子の話を聞いていた直治は「2人なんて、それっぽっちじゃ何も変わらないよ」と言う。子どもたちの間に悄然とした空気が流れる中、寅子は首を横に振り、「そうとも言い切れない。判例は残る」と言った。 「たとえ2人でも、判決が覆らなくても、おかしいと声を上げた人の声は決して消えない。その声がいつか誰かの力になる日がきっと来る。私の声だって、みんなの声だって、決して消えることはないわ」 何かが変わろうとする時、変えようとする時、障壁にぶつかることはあるだろうし、その歩みは遅いかもしれない。それでも、“おかしいと声を上げた人の声は決して消えない”。 物語において、母を気遣うあまり、寂しさを押し殺してしまう優未と寅子のやりとりには不安が残っている。だが、語り部(尾野真千子)が語る「諦めるもんか、絶対に」という心の声と、眠っている優未を優しく見守りながら自身が果たすべき役目を考える寅子のまなざしに、法に向き合い続ける寅子の強い信念を感じた。
片山香帆