ポーラ文化研究所の『平成美容開花』から紐解く 30年間の美容の軌跡
SNSには毎日美容の情報が溢れているなか、令和に入り5年が過ぎようとしている。この4年半ほどの間にも流行は変化し、私たちの美容の価値観も平成から令和にかけてだいぶ変わった。それまで、ネガティブに捉えられていた価値観がポジティブに変化し、多様性を尊重する社会とともに、美容に対する関心も男女問わず増えていった。 平成から令和にかけて私たちが求める美しさはどのように変化していったのだろうか。また価値観が移り変わってきたのにはどのような背景があったのだろう。 今回は、ポーラ・オルビスグループのポーラ文化研究所 化粧文化情報センター長・西原妙子さんに話を伺った。
目まぐるしく変化する美容の価値観
ポーラ・オルビスグループは、内面の美しさも大切にする「本当の美しさ」を追求するため、化粧文化の研究に取り組んでいる。1976年にはポーラ文化研究所を設立し、日本と西洋の古代から現代までの化粧文化に関する資料を収集・研究を開始。展覧会、セミナー、出版等に加え、WEBサイト、SNSなどデジタル発信にも注力してきた。 そんなポーラ文化研究所が2020年に発売したのが書籍『平成美容開花-平成から令和へ、美容の軌跡30年』(以下、平成美容開花)だ。社会が激動した平成30年間の化粧・美容の変化を独自の視点でまとめている。 「2020年にポーラ文化研究所から刊行した『平成美容開花』は、1970年代くらいから行っているアンケート形式の調査レポートと女性誌11誌から多様な記事を抜粋、独自の視点で分析したエビデンスを重視した本になります。美容に関するアイテム、使用法やテクニック、その表現などを約1万件のデータベース化し分かりやすく10年ごとに区切り、時代ごとのトピックスを俯瞰できるようにしました。 私どもは企業の研究所ですので、エビデンスのあることを書くべきという姿勢で企画、分析、執筆しました。平成の流行を完全に網羅するのは難しいかもしれませんが、平成の美容を検証し社会と共有しようと試みた本ということになるでしょうか」 30年間という平成の時代のなかで、確かに美容の価値観は目まぐるしく変化し、平成と令和の流行や価値観はメディアでもよく比較されるようになった。しかし、平成の潮流を踏まえた上で、まだ始まって5年に満たない令和をそれと比較するのは難しい。 しかし、10年ごとの区切りのなかで、私たちの価値観が令和に向けてドラスティックに変化したきっかけがあると西原さんは話す。 「平成はじめの10年は、バブル景気の影響もあって、女性が徐々にアグレッシブになっていった時代ですね。都会を舞台にしたトレンディードラマや安室奈美恵さんの影響が大きく、女性の美容への関心も高まっていきました。 平成中ごろの10年間は、見せたい表現をかなえるテクニックが浸透していった時期。放射線状に大きく華やかに広がるまつげや巻き髪が流行しました。「デカ目」「盛る」などの言葉が次々と生まれたのもこの頃です。 最後の10年になると、SNSを用いた情報発信のスタイルが定着するとともに、東日本大震災という大きな災害が私たちの生活や価値観を大きく揺るがすことになります。それ以降は、いかに自分らしく心豊かであるかがテーマとなり、価値観もかなりドラスティックに変わっていったように思います」