04年女児殺害で服役中の男を06年女子刺傷事件で逮捕 07年加古川女児殺害も関与示唆
兵庫県たつの市で2006年、小学4年だった女児を刃物で刺し重傷を負わせたとして県警は7日、殺人未遂容疑で、04年に別の女児を殺害した罪で服役していた勝田州彦(くにひこ)容疑者(45)を逮捕した。県警によると逮捕容疑について「女の子を刃物で刺したことに間違いない」と行為を認めた上で「殺すつもりはなかった」と殺意を否定している。 捜査関係者によると、勝田容疑者は服役中の任意聴取に対し、07年に同県加古川市で小学2年の鵜瀬柚希(うのせ・ゆずき)さん=当時(7)=が刺殺された事件への関与も示唆している。県警は女児を狙った連続襲撃事件の可能性もあるとみて裏付け捜査を進める。 逮捕容疑は06年9月28日午後6時20分ごろ、たつの市新宮町の路上で、学習塾から帰宅途中だった女児の胸や腹を刃物で複数回刺し、殺害しようとした疑い。 勝田容疑者は今年5月ごろから、当初否認していた加古川市、たつの市の事件への関与をほのめかしたという。事件当時は加古川市内に住んでいた。たつの市の事件時の状況を具体的に説明しており、県警は女児の負傷状況と矛盾はないと判断。周辺の防犯カメラに同年代の男が立ち去る姿が写っていたことも踏まえ、逮捕に踏み切った。 勝田容疑者は同県姫路市で15年、女子中学生を刺したとして殺人未遂容疑で逮捕され、服役中の18年、岡山県津山市で04年に小学3年の女児=当時(9)=を刺殺したとして逮捕された。22年に岡山地裁で無期懲役判決を受け、後に確定した。 裁判記録によると、中学校でのいじめや警察OBの両親から厳しいしつけを受けたことから自分の腹を刺すなどの自傷行為を繰り返していた。自傷行為の際には少女が血を流す姿を想像し次第に少女を狙うようになったという。裁判では「少女のシャツが血で染まるのを見たい」という特異な願望が認定された。18年の逮捕前には女児の母親に手紙を計29通送付。「苦しむ顔が見たいと思った」などと記されていたという。 ≪矛盾部分にも焦点当てて≫ 県警幹部は逮捕を発表した場で、勝田容疑者を5月から取り調べてきたと明らかにした。供述内容と当時の状況との整合性を捜査。任意段階での供述が「犯行や現場の状況と矛盾がなかった」と強調した。一方、新たな証拠や取り調べ以外の裏付け方法については「差し控える」とした。冤罪(えんざい)を避けるため客観証拠の重要性が増す近年の刑事司法手続きの傾向を踏まえ、慎重に裏付けを進めたとみられる。 勝田容疑者は04年の津山市での女児殺害事件の取り調べで犯行を自供したにもかかわらず、公判で一転して否認した過去もある。客観証拠は公判維持のためにも重要だ。津山市の事件で弁護人を務めた賀川進太郎弁護士は「18年前の記憶に基づく供述の信用性には疑問が残る」と話す。供述と客観事実が整合する部分だけが強調される懸念があるとし「供述と客観事実が矛盾する部分が軽視されてはならない」とくぎを刺した。