新型フリード正式発売! 新旧フリード&シエンタを徹底比較・解説!! 装備は?価格は?仕様は?あらためてわかった点も眺めていこう。
5月9日のティザーサイト公開時点で「6月発売予定」のアナウンスにとどまっていた新型フリードが6月27日に発表された。 発売は28日というから、2024年前半が終わるギリギリのタイミングでの発表・発売だ。 新型フリードについては5月時点で本サイトでも取り上げているが、車両価格を中心に、正式発表で明らかになった点を解説する。 TEXT:山口尚志(YAMAGUCHI Hisashi) PHOTO:山口尚志/本田技研工業 【他の写真を見る】値段に装備に実用性・・・正式発表のアンベールでで見えたそこかしこ
■いよいよ現れた新型フリード
5月にお伝えしたとおり、3代目を数える新型フリードがベールを脱いだ。 6月27日発表、発売は同28日。 ここ数世代のホンダ車というもの、わずかな規模のマイナーチェンジですらティザーキャンペーンで世の好奇心をあおるのが常套だから、看板車種のフルチェンジならなおのこと、買い替えを検討する初代、2代目のユーザーや、新型を他社&他車からの乗り換え候補に掲げていたユーザー予備軍には長い1か月半だったのではあるまいか。 もっとも、このチラ見せ作戦とて良し悪し・・・1か月半の間におおかたの予習がすんでいるため、いざ発表・発売の段になったところで報じる側も見る側も新規性は薄らいでいるのだが、それはそれとして、正式発売で明らかになった点を、5月の既報と重複するのはお許し願いながらあらためて解説していく。 ●2シリーズ3機種、駆動方式・乗員別でトータル18種の車両価格は? 新型はバリエーションの変更を受け、従来の5人乗り「フリード+(プラス)」は消滅。これまでの7人乗り/6人乗りのフリードを「フリードAIR」のシリーズ名でくくり、旧型の途中で加わった6人乗り/5人乗り「フリードクロスター」を、「フリードAIR」に対するもうひとつのシリーズに格上げしてポジションを明確化した。 このひと月半の間、新型フリードを気にするひとたちが予習したくてもできなかったのは機種構成と各々の車両価格だろう。 5月時点ではどのシリーズに何人乗りが用意され、全機種にFFと4WDが用意されることぐらいまでしか公表されなかったが、最終的にAIRシリーズは「フリードAIR」とその上級版「フリードAIR EX」の2種となった。「フリードクロスター」が1種なのは5月時点と変わっていない。 標準シリーズを「AIR」にしたところは現行ステップワゴンと共通。ただしあちらは「ステップワゴンAIR」「ステップワゴンスパーダ」「ステップワゴンPREMIUM LINE」の順でシリーズ名がそのまま下から上へのグレード構成になっている。やさしい顔がいいからと「ステップワゴンAIR」を選ぶとそれは下級モデルを選ぶことにもなり、装備内容に少々がまんを強いられるという不満があった。 その反省があったのか、「フリード AIR」は普及版と上級版の2とおりに分けられた。同時に、新型は2シリーズ構成といえど、「スパーダ」と違って「クロスター」はもうひとつの顔に過ぎず、ホンダはフリードの主体はあくまでも「AIR」であると考えているようにも見える。 余談だが、ステップワゴンもいずれ「ステップワゴンAIR」のほかに、「PREMIUM LINE」ではない「スパーダ」並みに装備を充実させた「ステップワゴンAIR EX」なるクルマが追加するにちがいない。 ●先代モデルからの値上げ幅と、シエンタとの価格を比較 機種構成と乗車人数、各々の車両本体価格は次のとおりだ(すべて消費税込み価格)。 月間の販売計画は6600台というから、いまどきのクルマとしては多いほうだ。 残念ながらというべきか、予想どおりというべきか。車両価格は上昇している。 機種構成や内訳、乗車人数=シート数が旧型と異なるから単純比較にためらいはあるが、最廉価版どうしを比べると、昨日まで売られていた旧フリード最終型の最廉価「フリードG」FF6人乗りが233万0900円だったのに対し、今回の新型最廉価「フリード AIR」は250万8000円と、17万7100円の値上げ。最上級機種(正確には最高価格機種)に至っては、旧「フリード+ ハイブリッド クロスター」の4WD版313万9400円から新型「フリード e:HEV クロスター」の6人乗り4WD車343万7500円と、29万8100円も吊り上がっている。要するに、下級機種から最上級機種まで、価格帯が全域上方シフトした格好だ。そしてこの価格構成に、ライバル・シエンタを意識した様子は見られない。 これもバリエーション展開が異なるので、比較するのに無理があることを承知の上で解説すると、シエンタはシリーズ最廉価「X」のFF5人乗りが199万5200円から最上級「ハイブリッドZ」7人乗り4WDの323万4600円までにとどまり、価格レンジがより底辺側に広がっている。 物価が上がって所得は下がる、横ばいなら御の字という時勢なら、誰だって初期費用(維持費もだが)は抑えたいと考える。その意味でより安めのクルマが選べるシエンタのほうが価格面だけでいうと有利だ。 ただし、クルマの使い方まで加味した選び方(それが本来だが)となると話は少し変わってくる。 ガソリン車と値段が高いハイブリッド車、ガソリン代でモトを取るのに何年かかるかを考えながら冷静にクルマ選びをするひともいるが、そのようなひとには新型フリードのほうが有利だ。ガソリン車はFFに限っているシエンタに対し、新型フリードはガソリン、ハイブリッド=e:HEV問わず、FFだって4WDだって用意してある。「おれの年間走行距離からしたらガソリン車のほうが得なんだ。」と考えるユーザー予備軍が北国にもいることを考えると、4WD需要の多い積雪地域担当の販売の神様は、シエンタよりも新型フリードのほうに微笑みを向けるだろう。ガソリン車4WD需要なんて、フリード全体のうちの数%かも知れないが、そのありなしは買う側には小さくないような気がする。 また、5人乗りと7人乗りの2択となるシエンタに対し、5人乗り、6人乗り、7人乗りと3とおりあり、乗車定員選択の柔軟性もフリードのほうが上だ。 ●ボディカラーは10種 ボディカラーが豊富だ。他のホンダ車にも用いられる色を使いながらフリードAIRに9色、クロスターに8色の計17色・・・といいたいのだが、よく見るとこれらのうち7色が両シリーズ共通で、「ルナシルバー・メタリック」と「フィヨルドミスト・パール」がAIRシリーズ専用、「デザートベージュ・パール」がクロスター専用となっており、実際には10バリエーションとなる。それでも数は多いほうだろう。全体的に暗めなトーンカラーに占められている。 【ボディカラー・AIRシリーズ(9色)】 【ボディカラー・クロスター(8色)】 なお、ルーフなどとボディ全体を塗り分ける流行りの(?)2トーン塗装は存在しない。 ●新たに見えた内外あれこれ 今回の記事に向け、実車を屋外で撮影することができたので、その内外をお見せしよう。 外観はステップワゴンほか、最新ホンダ車のデザイン流儀に則っているのは既報のとおり。 全体がプレーンな面で包まれているが、横から見たとき、全長が45mm延ばされたおかげで解消されたと思っていた寸詰まり感が、斜め後方視ではまだ残っていたのはおもしろかった。やはりスペースが限られた室内で見るのと、遠くからでも眺められる屋外で見るのとでは印象が違ってくるものだ。 ヘッドライトもリヤランプもすべてLEDで、今回、「フリードAIR EX」の6人乗り、「クロスター」の6人乗りに限り、工場オプションでコーナーリングランプ(LEDアクティブコーナリングライト)も併設するアダプティブドライビングビームが用意された。ステップワゴンAIRで不満だったのはこの点で、先進ライトが標準なのは最上級「ステップワゴンスパーダ PREMIUM LINE」に限られ、コーナーリングランプだって「・・・PREMIUM LINE」と「ステップワゴンスパーダ」だけに与えられていた。最廉価モデルとなってしまう「ステップワゴンAIR」ではオプションでも選ぶ余地がなかった。 ただ、AIR EXにしてもクロスターにしても、オプションはなぜか6人乗りに限っており、同じAIR EXでも7人乗り、クロスターなら5人乗りにつけられないのには首をかしげた。装備表をよく見たらe:HEV車に限っており、ガソリン車には全車オプション設定すらなしとわかったとたん、首がさらに1回転した。マニュアルエアコンとオートエアコンが両立しないのはわかるが、乗車人数とライトがかち合うとは思えない。ましてガソリン車には一切つかないなんて! 自動車に限らず、工業製品には、外野からは想像もつかない、造り手にしかわからない設計上の都合というものがあるものだが、うまくつくようになるといい。 というわけで、標準ライトとアダプティブドライビングビーム仕様、それぞれの点灯状態をお見せしよう。 【フロントランプ点灯状態(標準ライト)】 【フロントランプ点灯状態(アダプティブドライビングビーム)】 後ろのランプは全機種共通。上から順に、「田」の字みたいな形のターンシグナル、漢数字「一」型1本線のストップランプをはさんでまた田の字のテール/ストップランプ、そして再度「一」の字のリバース、リフレクタと続く・・・「田」「一」が繰り返されているようにも見えるし、見ようでは足し算引き算の「+-+--」にも映り、子ども時分、算数が苦手だったひとにはイヤなリヤランプかも知れぬ。もっとも「+」「-」でイヤな思いをするのは後ろのクルマで、中でハンドルを握っている当のオーナーは知ったこっちゃないかッ! 【リヤランプ点灯状態】 中に乗り込んで・・・ 筆者のような夏嫌いにとって、空調性能、とりわけ冷房能力は重大な問題だ。ましてや毎年夏に熱中症がどうのというニュースが飛び交う現代なら、一挙生き死にの問題にまでひとっ飛びする。 今回、クラス初で「リヤクーラー」を新設。経験的に「冷媒にフロン12を使っているのではあるまいか」と疑うほどホンダ車は冷房の効きがよく、このサイズといえどフィットよりは格段に大きいキャビンとあっては、夏のドライブでのリヤクーラーの存在は後席乗員にとってメリットは大きい。この部分、シエンタはサーキュレーターにとどまっているから、暑さが苦手というひとは新型フリード一択となろう。販売面でもさきのガソリン車4WD以上の大きな武器になる。 5月の記事で「ルーフ前席側にエアダクトがあるのは、サーキュレーターの機能もあるかも知れない。」と書いたが、確認したら「ない」とのことだった。でも夏嫌いとしては、フロント冷気を引っ張り込んでかき回し、全体に行き渡らせるなんていう効果のほどがよくわからないことをするより、後ろは後ろできっちり冷たい空気を出してくれるほうがよっぽどいいヤ! 空調といえば「エアコン連動型シートヒーター」がある。ヒーターが要る冬期、空調パネルの「AUTO」を押すと暖気が出るとともにシートヒーターが作動。その後は車内温度、外気温、日射量・・・従来からあったオートエアコンのためのセンサー情報をシート温度調整にも振り分け、空調と連携させて自動調整する。こちらもクラス初なのだそうな。 ●フリードクロスター クロスターは3列めシートがないのを活かし、そのスペースを荷室のユーティリティ向上に充てている。 荷台を超低床化、取り外しできる「ユーティリティボード」(5人乗りのみ)で2段分割となり、積み荷の種類によって使い分けできるようになっている。 サイド壁面にはステンレスの「ユーティリティサイドパネル」を設置。直径6mmの穴が25mmピッチで21×4=84点ならび、その上下には10点のユーティリティナットを5つ分けで配置してある。キャンプ用品や収納小物を引っ掛けるもよし、ねじ込むもよし、磁石でくっつけるもよし・・・ステンレス製だから、少々乱暴に扱っても傷の心配をせずにすむのがいい。 テールゲート内側にもフックやランタンなどを引っ掛けるユーティリティナットが6つついている。ランプもあるから屋根代わりに開けたバックドアの下で過ごしたいキャンブの場面でさぞ重宝することだろう。 ●スロープ/リフトアップシート(助手席) ここまで掲げた18バリエーションとは別に、もうひとつのシリーズに、クロスターを母体にしたスロープ車と助手席リフトアップシート車が展開されている。 主に車いす生活を送るひとや足が不自由なひとの乗降を同乗者が楽にアシストできるよう、スロープ車ならリヤフロアを低床化、電動ウインチ&路面との段差を解消する折り畳み式スロープ板で、地面からそのまま重荷や車いすをすべらせることができるし、リフトアップシート車なら助手席シートがリンク機構でリフトアップ/ダウンしながら内外を出入りできる。 「主に」と書いたのは、これは特に「スロープ車」についてなのだが、ホンダはこのクルマの使用形態を、介護目的ひとつに限っていないからだ。家具などの重い荷物の載せ下ろしだって楽に行えるほうがいいに決まっているし、キャンプをはじめとするレジャー用品も軽いものばかりではないだろう。要介護者が身近にいないひとでもこういったデバイスを便利に使えたら・・・そういった潜在(?)ニーズに応えるためのシリーズだ。ゆえに他社なら「福祉仕様」と呼びそうなこのシリーズを、ホンダでは「スロープ/リフトアップシート(助手席)」とネーミングしている。 これら機能をふだんは便利に使い、そのメカニズムを介護のときにも・・・次にクルマを買ってほどなく年老いた両親の介護時期が訪れそうなひとなら、いまのうちにフリードの「スロープ/リフトアップシート(助手席)」を買っておくのもひとつだ。 なお、ここに述べた機能を設ける都合上、「スロープ/リフトアップシート(助手席)」はリヤドライブトレーンを収めるスペースがフロア下にないために4WDはなく、FFのみの設定となっている。同じく構造上の問題で、「リフトアップシート(助手席)」はe:HEVパワーユニットの置き場所をリフトのメカ機構収容に使っているため、ガソリンFF車しかない。 また、「福祉車両」の呼称ではなくとも、福祉車両と同様、購入時の消費税はかからず、介護目的ではない、便利づかいに買うとしても非課税だという。 という点を踏まえたところで、「スロープ/リフトアップシート(助手席)」車の価格いちらんをごらんあれ。 最後、今回のフリードでホンダがアピールする販社オプションの写真紹介で締めくくることにしよう。 【ホンダが推す、新型フリード用販社オプションの数々】 フロアカーペットマット・プレミアムタイプ(1~3列め各席用、左右セット)。 ガソリン車用、e:HEV車用、それぞれで2列目シート仕様によって価格が異なる。 【ガソリン車用】 2列めキャプテンシート車用・4万7300円。 2列め6:4分割タンブルシート車用・4万7300円。 2列め6:4分割可倒式シート車用・3万8500円。 【e:HEV車用】 2列めキャプテンシート車用・5万2800円。 2列め6:4分割タンブルシート車用・5万2800円。 2列め6:4分割可倒式シート車用・4万4000円。
山口 尚志