マーガレット・ハウエルのリネンシャツが普通のシャツとひと味違うワケ
日本でオリジナルのリネン生地を開発
ここからは、春夏コレクションを象徴するアイテムに位置づけられる、リネンシャツの魅力を深掘りしていこう。お話をうかがったのは、株式会社TSIでMARGARET HOWELLのデザイナーを担当する飯田有甲(いいだゆき)さんだ。
「もともとリネンは創業時から使用している素材の一つです。リネンは軽く通気性に優れ、サラサラとした風合いも心地いい、いわば天然の機能素材。シャツやジャケットだけでなく、小物やホームウエアなどさまざまなアイテムに使用してきました」
リネンシャツはブランドの創業時から欠かさず展開され続けているという。
「ずっと作り続けてきた理由はシンプルです。デザイナーの思い入れが強い素材であるためです。特にアイコニックなディテールがあるわけではないのですが、リネンシャツはシーズンを重ねるごとに、その時の時代感に合わせて、素材の色みやパターン、縫製などアップデートをし続けています。その完成度は他のブランドのものと一線を画すると思います」
MARGARET HOWELLのリネンシャツが不変の人気を誇る理由のひとつが、独自のシャーティングリネンにある。かれこれ10年以上使い続けられている定番素材だ。 「もともと英国のアイリッシュリネンを使用していたのですが、天然の素材ということもあり、クオリティや供給の安定性に問題がありました。そこでリネン生地の豊富な生産ノウハウを持つ日本のサプライヤーとオリジナルの生地を開発することにしたんです。使用する麻糸も、本場のアイリッシュリネンを目指した特注の糸になっています」
リネンなどの夏用の生地は冬に生産されることが多いが、麻糸は乾燥すると切れやすくなるため、製織が難しくなる。生地サプライヤーには、製織や湿度管理など高い技術力が要求される。 「糸の番手(糸の太さを表す単位)や打ち込みの密度、仕上げの加工など、理想の質感や風合いになるまで、幾度となく試作を繰り返しました」