戸田奈津子「ヒュー・ジャックマンにはがっかりしたことも…」ハリウッドデビュー後にブロードウェイでもスターになった稀有な俳優の素顔とは
長場雄が描く戸田奈津子が愛した映画人 vol.43 ヒュー・ジャックマン
字幕翻訳の第一人者・戸田奈津子さんは、学生時代から熱心に劇場通いをしてきた生粋の映画好き。彼女が愛してきたスターや監督の見るべき1本を、長場雄さんの作品付きで紹介する。
失礼なパブリシストに注意しなかった
オーストラリア人らしい、大らかで明るく優しい人のイメージがあるヒュー・ジャックマンですが、ある映画のプロモーションで来日したときに、スタッフに甚だしく失礼な態度をとる女性パブリシストを連れてきたことがあってね。 これまで何度も日本のスタッフが映画をPRして盛り上げてくれたことを知っているはずなのに、失礼なパブリシストに何も注意しない彼の態度を残念に感じたことがありました。 ただ、彼自身は本当にいい人で、ブロードウェイで『オクラホマ!』に出演した後の来日のときなど、プライベートの時間に頼むと、脚を上げて『オクラホマ!』の主題歌を歌い、踊ってくれたりしたの。インタビュー中もサービス精神たっぷりに、おもしろおかしく話を聞かせてくれる人でした。 見るべき1本を挙げるとするなら『レ・ミゼラブル』(2012)かしら。 ミュージカル映画では事前に録音された音に合わせて芝居をすることが多いけれど、あの映画では実際に撮影現場で芝居をしながら歌を歌ったそう。 ブロードウェイ→ハリウッドに進出したスターは多いけれど、真逆にハリウッド→ブロードウェイのスターになったのは、私の知る限り、彼くらい。本当に才能豊かな俳優です。 語り/戸田奈津子 アートワーク/長場雄 文/松山梢
『レ・ミゼラブル』(2012) Les Miserables 上映時間:2時間38分/イギリス・アメリカ 舞台は19世紀フランス。パンを盗んだ罪で19年間、投獄されていたジャン・バルジャン(ヒュー・ジャックマン)。心を入れ替えた彼は過去を捨て、やがて市長の地位を手にするものの、ジャベール警部(ラッセル・クロウ)に正体を見破られ逃亡を余儀なくされる。 不幸な女性ファンテーヌ(アン・ハサウェイ)から託された娘コゼットと共にパリへ向かい、深い愛情を注いで育てたバルジャンだったが……。 作品賞・主演男優賞などアカデミー賞に8部門ノミネートされ、助演女優賞(アン・ハサウェイ)など3部門を受賞した。 ヒュー・ジャックマン 1968年10月12日生まれ、オーストラリア・シドニー出身。大学在学中に演技に興味を持ち、オーストラリアのテレビシリーズ『Corelli』(1995)などに出演。 『美女と野獣』『サンセット大通り』『オクラホマ!』など舞台でも活躍する。2000年に『X-メン』(2000)でウルヴァリン役に抜擢されると、ハリウッドでも一躍スターに。 主な出演作は『ニューヨークの恋人』(2001)『ヴァン・ヘルシング』(2004)『ファウンテン 永遠につづく愛』(2006)『オーストラリア』(2008)『ウルヴァリン』(2009・2013・2017)シリーズ、『レ・ミゼラブル』(2012)『グレイテスト・ショーマン』(2017)など。
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