JR東日本、交通系ICカードの苦戦認めた? 新ビューカードに「タッチ決済対応版」ついに登場、決済革新の行方どうなる?
クレカタッチ急増、JRに圧力
これは、JR東日本の姿勢を示しているといえる。 JR東日本としては、今後もSuicaをキャッシュレス決済の中心的存在として推し進める姿勢を崩していない。Suicaを活用した新たな取り組みや企画も進行中で、最近では位置情報と連携したモバイルSuicaの「ウォークスルー改札」が発表され、注目を集めている。Suicaは単なる決済手段を超えた、広大な可能性を秘めている。 しかし、現状ではクレカタッチ決済の急速な普及に押され気味なのが事実だ。私鉄を中心に一斉導入されたタッチ決済は、JRグループに 「大きなプレッシャー」 を与えている。さらに、タッチ決済は日常生活に欠かせない決済手段として定着しており、公共交通を超えて、あらゆる場面で重宝されるようになった。 近未来と現状は切り離せず、そのジレンマが上述の不自然なプレスリリース内容に影響を与えているのではないだろうか。
Suica、技術と歴史の融合
もっとも、だからといってビューカードがタッチ決済対応カード(Suica機能がないカード)を強調しすぎると、利用者に混乱を招く可能性がある。 Suicaは、実験期間も含めるとすでに四半世紀以上の歴史を持つ。これまでにさまざまなブランド戦略を講じ、実行に移してきた。現在の交通系ICカードの広がりは、Suicaがその基盤を築いてきたと言っても過言ではない。 今の苦境があるからといって、長年培ってきたものを安易に手放すのは早計であり、無責任ともいえる。 また、タッチ決済が交通系ICカードを技術的に完全に超えているわけではない。タッチ決済に導入されているNFC(近距離無線通信)規格はType A/Bだが、交通系ICカードのそれはType F(FeliCa)。情報の処理速度は後者が圧倒的に速く、交通系ICカードは利用者に関するさまざまな情報を抱え、ビッグデータとして活用することが可能だ。 現状、クレカタッチ決済の急増に押され気味というのは一時的な状況に過ぎないかもしれない。Suicaを旗手とする交通系ICカードが再び勢いを取り戻すシナリオも十分に考えられるのだ。
競争相手に負けないSuicaの進化
これらを踏まえると、JR東日本とビューカードは新たな競争相手の登場に直面しつつも、なおSuicaの可能性を強調し続ける姿勢を崩していない。今後、アピールの方向性もさらなる工夫が加わることだろう。 タッチ決済機能のないカードを利用する利用者に対しても、モバイルSuicaとの連携を通じて不足分を補完できるようにしていくべきだ。 ビューカードがその利便性を強力にPRし、カードとモバイルSuicaの機能連携を深めれば、 「最強の決済デバイス」 としての位置を確立できる可能性が高まるだろう。
上原寛(フリーライター)