味方良介“出待ち”がもたらした人生の転機「憧れの人が自分に手を振ってくれたことが、心から嬉しかったのを鮮明に覚えています」
2011年、19歳でミュージカルデビューをした味方良介さん。その後もさまざまな舞台に出演し、最近はドラマ・映画などの映像作品にも進出している。ミュージカルに憧れていた少年時代から現在まで、葛藤の連続だったという俳優人生の転機を聞いた。【第3回/全5回】 ■【画像】楽屋口での“出待ち”が人生の転機をもたらしたと語る味方良介「THE CHANGE」オリジナル動画
ミュージカル『エリザベート』の衝撃
ミュージカルコンサート『恋するブロードウェイ♪』でデビューして以降、さまざまな舞台で活躍し、近年はドラマや映画などの映像作品でも活躍している味方良介さん。その俳優人生のはじまりは、あるミュージカルと出会ったことから始まった。 「母が演劇好きで、小学校5年生のときにミュージカル『エリザベート』に連れて行ってもらいました。本来は兄が行く予定だったのですが、急遽行けなくなり、席が一つ空いてしまうので僕が行くことに。当時の僕は外で遊ぶのが好きで、舞台やドラマにはほとんど興味がなく、観劇という発想もありませんでしたが、“終わったら美味しい夕食を食べさせてあげる”と言われ、その言葉につられて観劇することにしました。」 ーーその『エリザベート』にハマってしまったんですね。 「はい、物語の後半に登場する皇太子ルドルフの姿、歌、存在感を観た時に、自分の中に衝撃が走り“あれになりたい!あれになる!”と心の中で決めました。舞台が終わった後、”食事より、CDを買って欲しい“と母にお願いをし、それから毎日CDで繰り返し楽曲を聴いて、口ずさみ、外で遊ぶことが減り、生活が一変しました。」
ミュージカルオタクになっただけ…
ーー具体的になにが衝撃だったんですか? 「その時の気持ちは、今でもよく説明できないのですが、ただ“あれになりたい!”と無我夢中でした。たとえば、小さい子が仮面ライダーになりたいと思うのと同じ感覚だったのではないでしょうか。”将来の夢は俳優です!“ ではなく ”将来の夢はルドルフ!“といった感じで。毎日、一人『エリザベート』をやっていたのですが、さすがにわんぱくな少年も、日が経つにつれて”このままじゃルドルフにはなれないな”と気づき始めました。笑」 ーー次になにをしたんですか? 「これも自分でも不思議なのですが、『エリザベート』の時代背景を学ぼうと、図書館に通ってハンガリーの歴史や過去の出来事を調べ年表を作ったり、内面からルドルフに近づこうとしていました。が、またしても途中で “待て、これじゃルドルフになれない!” と気づき、内面ルドルフをやめました(笑)。ただ、歴史的背景や関連作品を調べていくうちに、他にもたくさんの舞台があることを知り、おかげで多くの舞台作品を観るようになり “ミュージカル俳優になればルドルフになれる!” と思い始め、俳優への夢が少しずつ芽生えていきました」 ーー少しルドルフに近づきました。 「なぜか今度はミュージカルについて深く調べ始めました(笑)。探究心が強かった僕は、ミュージカルの歴史を頭に叩き込み脳内に年表を作るほど、なによりもミュージカルに夢中になる日々を過ごしていました。 中学生になると、近所の舞台に詳しい方から “ミュージカルをやりたいならバレエを習うといいよ” とアドバイスをもらい、それをきっかけにバレエを始めました。しばらく通っていると、講師からコンクールに出るように勧められましたが、その時ふと ”このままだとバレエダンサーになってしまうのでは” と自分の夢とは違うことに気づき、バレエをやめ、再びミュージカル雑誌やCDに向き合う生活に戻りました。ただ、振り返ってみると、あの時の経験が今も生かされているので決して無駄ではなかったです」