まさに「神戸のお嬢さま」…!美貌と品格を備えるパンダ「タンタン」の「愛くるしい瞬間」
神戸市立王子動物園で飼育されているメスのジャイアントパンダのタンタン(旦旦)が亡くなったのは、2024年3月31日、午後11時56分のことだった。28歳。人間でいうと、80代以上。大往生といってもいいくらいだ。 【写真】まるでぬいぐるみのよう…タンタンの「愛くるしい瞬間」の数々! 前編記事『いつまでも忘れない…小柄で脚が短くて、めちゃかわいいパンダ! タンタンの「バレリーナ・ポーズ」』につづき、ありし日のタンタンの魅力を紹介する。
「神戸のお嬢さま」と呼ばれて
体形はもちろん、顔も可愛らしい。目の周りの黒い模様(アイパッチ)は、桜の花びら形でおしゃれ、かつ優しい印象を与える。口元は、いつもはにかんでいるようだ。耳はすこし小ぶりで、つつましい。正面はもちろん可愛いけれど、斜めからでも、口元がにっこり笑っているようである。個人的には斜めの鼻のラインも好ましい。 おしりはまんまる。小柄な分、まるっこさが際立つ。後ろ姿は、歩いていても、止まっていても絶妙に愛らしい。座っているときの背中も、おにぎりのようでほのぼのする。実は、タンタンの後ろ姿を模したおにぎりも販売されていた。 見た目だけでも文句なく可愛いタンタンは、優雅でのんびりかつおっとりした仕草や所作から「神戸のお嬢さま」と呼ばれていた。神戸というと、芦屋が高級住宅街として有名だ。そこに住むお嬢さまのような美貌と品格が、タンタンに備わっていた。 また、「神戸のお嬢さま」にふさわしく、たいそう大切にされていた。2人の男性飼育員や「DJ警備員」呼ばれた警備員など、頼もしくて素敵な「執事」に囲まれ、「深層の令嬢」として、献身的にかしずかれてきた。 タンタンを支えてきた人は、園外にもいる。「竹取の翁」だ。そう、タンタンは、お嬢さまでもあり、お姫さまでもあった。
竹を選り好みするグルメな一面も
竹を選り好みするグルメなタンタンは、飼育員さん泣かせだったという。そのタンタンに、おいしい竹を提供してきたのが、「竹取の翁」こと、神戸市北区淡河町の「淡河町自治協議会笹部会」の3人だった。 週3回、交代で新鮮な竹を収穫し、動物園に運ぶ。20年にわたり、タンタンに竹を届け「若い竹よりも、数年育ったほうがいい」などと好みも熟知していたそうだ。もくもくと竹を食べてくれるタンタンを見ることは、竹取の翁にとって最高のご褒美だっただろう。 なお、タンタンに新鮮な竹を食べてもらうために、園内でも栽培していた。タンタンが亡くなったときの記者会見では、園内で収穫したたけのこをタンタンが食べてくれたことを飼育員が思い出として語っていた。 勝手な推測ながら、タンタンがその生涯で辛かったであろう出来事をひとつ挙げるしたら、2008年に出産した赤ちゃんが生後4日目に亡くなったことだろう。 その後、パートナーのコウコウが2010年に亡くなり、新しいオスの来日は実現しなかった。タンタンは、発情の兆候があると、「擬似妊娠」ならぬ「擬似飼育」することがあった。筆者も、竹を赤ちゃん代わりにあやすタンタンをこの目で見たことがある。 こんなに愛情深いタンタンに、もう一度子どもを産み育てる機会があってほしいと切実に願った。叶わなくてほんとうに残念だ。