ヒートポンプ給湯器、サイバー対策義務付けへ…違反メーカー名の公表も検討
太陽光発電の余剰電力を使う家庭用ヒートポンプ給湯器の普及に備え、経済産業省はメーカーに対し、2030年度をめどにサイバーセキュリティー対策などを義務づける出荷基準を設ける方針だ。サイバー攻撃で電力システムの混乱が予想されるためで、25年にも関連法を改正し、違反した事業者の公表も検討する。
ヒートポンプは大気熱を電気で圧縮し、高温にして給湯や暖房に利用する。日中に発電する太陽光の余剰電力を活用する。IoT化された機器をオンライン接続すれば大規模なネットワークにつながり、効率的に電気の使用量を調節できる反面、サイバー攻撃によって電力の需給が乱れ、大規模停電につながる恐れもある。
経産省は保存データの保護や通信の暗号化といったサイバーセキュリティー対策のほか、通信機能の様式など、オンライン接続に関する要件を設ける。メーカーや輸入業者には30年度を目標に、要件に適合した製品を一定以上出荷するよう義務づける。違反した場合は是正を勧告し、社名の公表も検討する。
ヒートポンプの推計設置件数は22年度の747万台から50年度に約5倍の3651万台に増える見通し。太陽光発電の増加で日中に電力が余り、太陽光の出力制御が増えており、政府は再生可能エネルギーの有効活用と出力制御の減少につながるヒートポンプの普及を促している。年度内の改定を目指す次期エネルギー基本計画で普及促進の方針を盛り込む。
政府は50年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロとするカーボンニュートラルを目標にしている。二酸化炭素(CO2)排出量の15%を占める一般家庭での削減と再生エネの有効活用が課題で、将来的には家庭向け蓄電池でも同様の出荷基準を設ける方針だ。