船員など海技人材確保、ハードル引き下げを。一般大卒や陸勤者向け
国土交通省海事局はこのほど、第3回海技人材の確保の在り方に関する検討会の議事概要を公表した。今会合では複数の論点が浮上。委員間で一般大学・高校の卒業生、陸上企業からの転職希望者らが海技人材を目指すことへのハードルを引き下げる方向性などに同意した。 今会合は6月20日に開催。事務局(海事局)の資料説明の後、委員間で複数の論点の下、意見交換した。海技人材の確保に向けて、退職者の復職も含めたルートの多様化などを訴える声が上がった。 船員養成・機関の在り方の論点では「条約や乗船実習をするための要件などを満たすような形で社船訓練を増やすことはできないか」「海技教育機構(JMETS)の練習船で全て行うのではなく、社船実習やシミュレーターを取り入れることで、多様化するコース設定に対応可能な環境が整備されるのではないか」などが挙がった。 今後求められる海技人材を論点とする議論では、EV(電気推進)船やアンモニア燃料にも言及。EV船については「内燃機関を基準とした機関部の資格要件などを持った機関長と職員で対応している」との現状を共有。 一方で、「EV船に対応可能な知見を十分に持ち合わせていない状況が現場では生じている」とし、新技術・新燃料に対応した資格や配乗の在り方の議論の必要性が指摘された。 アンモニア燃料については強い毒性に留意。その上で「実態先行でなく、設備の要件や資格、船舶の管理などの要件をあらかじめ明文で規律する必要がある」などの懸念が示された。 船員の労働環境改善などのための原資の確保も論点となった。「内航における長時間労働の常態化など、船員の違法な状態での就労を完全に排除することを船員労務官による労務監査などにより徹底してほしい」との声が上がった。 同検討会では少子高齢化、幅広い業種で生じている人手不足、輸送ニーズの動向など、内航・外航海運を巡る諸情勢の変化を踏まえ、船員、海技人材の確保の在り方を議論する。 労使、学識経験者らが委員を務め、年内に一定の方向性・中間取りまとめを策定することを目指している。
日本海事新聞社