【ドラッグストア勢力図刷新か】マツキヨココカラの反撃が始まる…ドラッグストアのスーパーマーケット化に成功したウエルシア・ツルハに見えてきた陰りの原因
業界の本流に逆らった戦略が奏功
本業での稼ぐ力を表す営業利益率が、3社の中で断トツに高いのもマツキヨココカラだ。直近通期の営業利益率は、マツキヨココカラが6.6%。ウェルシアが4.0%、ツルハが4.7%だ。しかも、ウエルシアとツルハは今期もほぼ同水準を見込んでいるが、マツキヨココカラは1ポイント近く高い7.3%を予想している。 利益率の差は、売上を構成する商品カテゴリーの違いによるものだ。 マツキヨココカラは、化粧品の売上構成比率が34.2%。ウエルシアは15.5%、ツルハは14.2%だ。一方、食品においては、ウエルシアが23.4%、ツルハは25.2%と高く、マツキヨココカラは9.2%ほどしかない。ウエルシアとツルハは大型店で品ぞろえを充実させ、スーパーマーケットの顧客を奪う構図が続いていた。 経済産業省の調査(「2022年小売業販売を振り返る」)によると、2022年のドラッグストアの市場規模は前年比5.5%増の7.7兆円、スーパーマーケットは1.0%増の15.1兆円だった。規模は2倍近い差が開いているものの、成長性はドラッグストアのほうが高い。その要因の一つが、ドラッグストアのスーパーマーケット化だ。ウエルシアとツルハは品ぞろえで業界の成長をけん引した立役者だった。しかし、ウエルシアの食品カテゴリーの売上総利益率は18.9%と極めて低い。雑貨でも28.2%ある。化粧品は33.1%だ。 マツキヨココカラは業界の流れから逆行するように独自戦略に邁進した。その成果が出始めている。
アパレルとは異なる化粧品特有の消費行動
一方、化粧品の販売は、「ECに顧客を獲られるのではないか?」という懸念がある。 アパレルの実店舗がZOZOTOWNに顧客を奪われている現状を見れば、そう考えるのも当然だ。しかし、化粧品に限っては、その可能性は低そうだ。 NTTコムリサーチが行った調査(「化粧品購入行動に関する調査結果」)によると、化粧品の購入場所でドラッグストアと回答した人の割合は実に84.1%に及んでいる。これは2022年の調査だが、3年前に行ったものでもその割合は83.0%だった。コロナ禍で購買行動がデジタルに移行した期間を経てもほとんど変化していない。 購入前に経験したことを聞いた質問においては、「店舗に置いてあるテスターで試してみた」との回答が34.6%と最も高い。化粧品は直接肌につけるもののため、実際に試したいと考える消費者が多いのだ。これは、アパレル系のECサイトに掲載された写真で、それを着用するイメージを膨らませる購買行動とは明らかに異なる。 試供品をわざわざサイトで取り寄せ、実際に試して購入するか決めるというのも、手間がかかりすぎるだろう。経営統合する前のマツモトキヨシは、かつて業界トップを走り抜けていた。再び1位に返り咲くことができるのか注目だ。 取材・文/不破聡