リニアで水資源が流出する? 南アルプストンネル工事めぐる静岡県の懸念
品川―名古屋間を40分で結ぶリニア中央新幹線。JR東海は2027年の開業を目指し建設を進めており、2045年には大阪まで延伸する計画だ。東京、神奈川、山梨、長野、愛知で工事が行われているが、静岡県にかかる区間は未着工。静岡県はJR東海に対して、水資源を棄損することがないよう求めている。
「静岡から出た水は全量、静岡に戻すようJR東海に要望している」と静岡県幹部職員は話す。県などの説明によれば、品川と名古屋を結ぶリニア中央新幹線は品川を出発した後、山梨から上り勾配となり、静岡・長野県境で上りの頂点に達し、名古屋に向けて下り勾配で進行していくという。山梨から長野に至る南アルプスの山岳地帯はトンネルを建設してリニアを通す計画だ。 静岡県内の工事区間は、静岡市北部の11キロメートルで、工事区間すべてが25キロメートルにわたるトンネル工事の一部になるという。その工事区間は大井川の源流域にあたる。本来、大井川に流れ込むはずの水が、リニアのトンネルが出来るとトンネルの湧水となり、勾配のあるトンネルを通して静岡から流出する可能性があるという。JR東海は、その影響について、箇所によっては大井川の流量が1秒当たり2トン減少する可能性もあるとの予測を示している。
すでに工事が始まっている都県はいずれも開業に合わせて駅が設置されるが、静岡県の場合は山間部のトンネルを通過するだけで、リニア開業の直接の恩恵を受けるとは言い難い。県は利水者の懸念を受けてJR東海に対応を強く求めてきた。 JR東海は今年1月、建設するリニアトンネルと大井川を11キロメートルにおよぶ導水管で結び、トンネル内の湧水を大井川に戻す案を提示した。しかし、県によると、導水管を建設した場合でも、回復する流量は1秒当たり1.3トンにとどまり、残り0.7トンは流出してしまう可能性があるという。 県によるとJR東海は導水管によって戻しきれない水について、必要に応じてポンプアップを行って大井川に戻すとしているという。しかし、県や利水者は、必要に応じてではなく、常にポンプアップを行って全量を大井川に戻すようJR東海に引き続き要望している。