[独占インタビュー]なぜ阪神から西武トレードの榎田は新天地で蘇ったのか
フォーム改造の成果はピッチャーにとって生命線であるストレートを蘇らせた。 「去年よりも真っ直ぐを両サイドにしっかりと投げれています。だから見逃しも空振りも取れるんです。基本はやはり真っ直ぐです。去年は、1球でゾーンで勝負しようとしていましたが、今は、真っ直ぐがいいので変化球がうまく散らばって組み立てができています。だからバッターが振ってくれます。それをうまく(炭谷)銀仁朗がリードしてくれていて、その配球に投げきれているので、そこをバッターが振ってくれています」 打者にすれば、新フォームでリリースポイントが近くになったことで、タイミングを合わせ辛くなり、ストレートに差し込まれる。つい微妙なコースの変化球に手が出て凡退を繰り返す。リズムよくスイスイと打ち取っていく榎田の姿は痛快だ。 それでも榎田の自己分析は至って謙虚。浮き沈みを味わってきた左腕は浮かれることはない。 「セ、パの違いはありますね。でも、結局、まだ他チームが僕に慣れていないという部分が大きい。実は、ウエスタンなどで対戦経験のあるオリックス(5月20日、7回5安打2失点で負け投手)は、ちょっと違う反応だった。これから一回り、ふた回りしていくと僕のデータが出てくる。対応は変わってくると思うんです」 パ・リーグは、球団が全国に散らばっているために移動が多く環境は厳しいという。 「生活環境は大変で、特に移動が大変なんです。143試合をこの中で戦うパの選手はタフです。凄いと思います。セの移動は楽ですよ」 自家用車を使う移動もかなりあって「運転って意外と体力いるんです」。西武では、移動の疲労を軽減するために運転手を雇っている選手もいるという。 だが、今、投げることのできる幸福感がその苦労を上回っている。 「5回を投げきることが目標。そこから6回、7回とできるだけ長く投げることがベストです。ゲームを壊さないこと。僕はスーパーピッチャーじゃありません。勝ち星や防御率よりも普通のことを普通にやって、いかに負けないか。エースではなく5、6番目のピッチャーですから。そのピッチャーが、とんとんなら他のエースで貯金ができる。他のピッチャーが作った貯金を僕が食いつぶすことだけはしてはいけないんです」 自らの西武での役割をそう考えている。 これもまた運命なのだろうか。 ローテーションの巡りで明日3日、本拠地での交流戦の阪神戦に先発が濃厚となった。