災害大国・日本に生きる人の資産防衛…元本保証でインフレに強い「国債」という選択肢【経済評論家が解説】
地震大国であるわが国ですが、近年では気候変動の影響により、これまでに類を見ない大規模な災害が増え ています。しかし、万一の事態を見越して預貯金に励んでも、インフレになってしまっては台無しです。ここでは、元本保証でありながらインフレにも強い金融商品について見ていきます。経済評論家の塚崎公義氏が解説します。 年金に頼らず「夫婦で100歳まで生きる」ための貯蓄額
普通の国債は「固定金利」なのだが…
国債というのは、国が発行している借用証書です。銀行の定期預金のようなものです。プロ用のものは途中解約できない代わりに途中で売却できるのですが、個人向けの国債は途中で解約できるので、銀行の定期預金とほとんど同じだと考えてよいでしょう。 銀行は倒産するリスクがあります。1,000万円までの預金は銀行が倒産しても政府が代わりに払い戻してくれますから、庶民は心配する必要はありませんが、多額の預金を持っている人は国債の方が安心かもしれません。それから、金利も銀行の定期預金より国債の方が少し高い場合が多いようです。 普通の国債は最初の段階で満期までの金利がすべて決まります。これを固定金利と呼びます。例外は、後述の個人向け国債10年物と物価連動国債です。 国債の期間は様々ですが、固定金利は「将来予想される短期金利の平均」になるのが基本です。投資家たちは「長期国債を買うか、短期国債を買って満期時に新しい短期国債を買うか」考えて、得になりそうな方を選びます。したがって、投資家たちが今後の短期金利が今より高いと予想している場合には「長期国債の金利がよほど高ければ買うが、そうでなければ短期国債を買っておこう」と考えるので、長期金利は高くなるのです。
「個人向け国債10年物」は、変動金利で元本保証
個人向けの国債には、3年物、5年物、10年物があります。3年物と5年物は固定金利ですが、10年物は変動金利です。半年ごとに、「半年後の利払い日には、今日の長期金利の0.66倍の金利を使って計算した金額を金利として支払う」というものです。 長期金利という言葉は、プロ向け国債10年物の利回りのことを指す場合が多く、本稿でもそれにならっています。0.66倍というのは不思議な感じもしますが、長期金利の方が短期金利より高い場合が多いので、気にする必要は無いでしょう。 日銀が短期金利を引き上げるまでには未だしばらく時間がかかりそうですが、長期金利は今後10年間の予想短期金利を反映するため、すでにプラスになっています。つまり、短期国債を買っても金利はほとんど貰えないのに、個人向け国債10年物を買うとすぐに金利がもらえるのです。 ちなみに2023年12月発行の10年物個人向け国債は、最初の半年間の分として、長期金利0.7%の0.66倍である0.46%も金利が付きます(税引き前)。 今後についても、少子高齢化による労働力不足で賃金が上昇し、それが売値に転嫁されてインフレになり、短期金利が上昇していく可能性を考えると、長期金利も上昇していくでしょうから、インフレへの備えとしての心強い味方と言えそうです。 筆者は「銀行預金は、インフレが来ると目減りする(買えるものが減ってしまう)リスク資産だから、インフレに強い株や外貨も持っておこう」と言っています。さまざまなものに老後資金を分けておくと、なにか起きても悲惨な老後に陥るリスクは小さくなりますから、分散投資を心がける、というのが筆者の考え方の基本なのです。 しかし、株や外貨は値下がりリスクがあるから持ちたくない、という人も多いですね。そうした人は、値下がりリスクがないうえにインフレに強い資産として、個人向け国債10年物を検討してみてはいかがでしょうか。 ちなみに、発行から1年間は換金できず、中途で換金すると過去1年分の金利を返還する必要がありますが、受け取ったものを返還するだけで、損をするわけではないので、心配は無用です。