「京都の規制を逆手にとって」隈研吾氏、監修した新ホテルへの思い「自然と街をつなげる新たな象徴」
建築家・隈研吾氏が、自身が監修した京都の新ホテル「バンヤンツリー・東山 京都」(京都市東山区)のオープニングセレモニーに登壇。京都初となる、敷地内の「能舞台」への思いを明かした。 【写真】京都のホテルで初!隈氏が監修した「能舞台」 シンガポールを拠点にしている「バンヤン・グループ」の旗艦ブランドが今回、観光地の多い京都・東山エリアで日本初進出。2019年に閉館した「ホテルりょうぜん」の跡地に誕生し、建物の高さ制限など景観ガイドラインが厳しい京都だが、高台に位置&敷地内で12mの傾斜があるため4階でも京都の街並みが一望でき、また市内では珍しい天然温泉も楽しめる。 隈氏は、「このプロジェクトの構想をいただいたとき、『あぁ良い場所だな』と実感しました。ですが、京都は非常に規制が厳しくて(笑)」と、建物の高さ制限など景観ガイドラインが厳しいことに触れ、「最終的にはこの規制を逆手にとって、森に対して溶け合うようなリゾートがつくれないかと思い、設計を始めました」とコメントした。 そんな思いから生まれたホテルは、東山の自然に溶け込むような外観、そして客室はホテル全体のデザインコンセプト「幽玄」を掲げ、世阿弥による能楽論『風姿花伝』のなかの言葉「秘すれば花」をテーマにデザインされている。 そして同ホテルの大きな特徴は、敷地内にある「能舞台」。隈氏は、「いくつか能舞台は設計してきましたが、『複式夢幻能』という世阿弥の考え方を引き継いで、今までにないようものをつくりたいなと思って。この舞台は上が抜けておりまして、空や後ろの竹林と一体になっております。水に浮いた、空に抜けた能舞台。このようなものはどこにも存在しない。自然と人工物をつなぐ、このホテルのディテールに繋がっています」と説明した。 最後に、「日本の旅館の良さが世界の最高級のリゾートとつながった、画期的な建物になったと思います。京都という世界の宝で、この建物が自然と街をつなげる新しい京都の側面を象徴する建物として、末長くみなさんから愛されることを心から望んでおります」と意気込んだ。 近隣には清水寺や高台寺、二寧坂や産寧坂、護国神社や知恩院など、観光スポットが点在している。同ホテルの立地を生かした早朝参拝などで、観光集中の緩和への一手にも期待が高まる。同ホテルは1室20万円~(朝食・夕食付き、サ込、宿泊税別途)、詳しくは公式サイトにて。