アメリカと中国の新たな軍拡競争…技術的優位性で鍵を握るのはAI(海外)
アメリカが軍事的な優位性を維持しようと努力する一方で、中国は軍の増強と近代化を進めている。 【全画像をみる】アメリカと中国の新たな軍拡競争…技術的優位性で鍵を握るのはAI 最新技術を追及することによって、両国はこれまでとは異なる種類の軍拡競争に陥っている。 アメリカ空軍長官は、AIが将来の戦争で鍵を握るだろうと述べた。 アメリカとの「技術的優位性をめぐる競争」を繰り広げている中国が、自国の軍隊とその力を使って国益を推進する能力にますます自信を持つようになるにつれ、「我々はこれまでよりはるかにリスクの高い時代に入ることになるだろう」とアメリカ空軍のフランク・ケンドール(Frank Kendall)長官が指摘している。 アメリカの「マイクロエレクトロニクス・コモンズ(ME Commons)」と「国立半導体技術センター(NSTC)」は、2024年10月29日に年次総会とシンポジウムを開催した。パネルディスカッションではケンドール長官が、ミサイルなどの分野で中国が米軍よりも優位に立っているようだと報告した。また、中国との対立がどのようなものになるのかをアメリカ当局が検討する中で、中国による先進的な衛星や自動化された戦闘管理システムの開発が注目を集めているとも指摘した。しかし、この競争ははるかに深い部分にまで及んでいる。 中国は人民解放軍の近代化を効果的に進めており、特に空母や衛星といった米軍の重要な戦闘資産に対抗するためのシステムを配備しているという。 中国は長年にわたって米軍の動きを研究している。「中国がアメリカを打ち負かすために設計していたのは装備や物資だけではない。軍全体がそれを目指して作り上げられてきた」と長官は述べた。 アメリカ国防総省は何年にもわたって中国軍の驚異的な成長を追跡しており、同軍による軍艦への投資、ミサイル能力と備蓄の強化、宇宙やサイバー空間での先進的開発について記録してきた。米軍は、中国を特にインド太平洋地域における「ペーシング・チャレンジ(地政学的挑戦)」とみなしている。 しかし、米軍は中国軍の近代化に追いつこうと努力してきたにもかかわらず、ある意味「先手を打たれてしまったようだ」とケンドール長官は述べた。そのような分野には巡航ミサイルや弾道ミサイル、極超音速ミサイル、それと「我々の統合軍を標的にするように設計された何百もの衛星」や「高度な自動化を備えた戦闘資産を統合・制御するための先進的な戦闘管理システム」などが含まれる。 中国はロケット軍を立ち上げ、その能力を強化させることで、米軍がインド太平洋地域に配備した軍事基地や飛行場を攻撃範囲内に置けるようになった。 そのロケット軍には、従来型のシステムに加え、「DF-17極超音速ミサイル」などの最新兵器も装備されている。 ケンドール長官は、中国空軍の空対空ミサイルの中には、タンカーや指揮統制機を攻撃できる射程のものがあるとも指摘した。 「これらは従来、攻撃射程外にあり、ほぼ無防備な状態で運用できていたが、もはやそういうわけにはいかない」 戦場の様相は変化しており、先進的な戦闘技術の開発によって、ケンドール長官が「従来の軍拡競争ではなく、技術的優位性を求める競争」と呼ぶ状況が生まれている。もはや単に軍艦の数を競うだけではなくなっているのだ。 ケンドール長官によると、新たな軍拡競争の鍵となるのはAI(人工知能)であり、「中国はこの分野で積極的に前進している」という。さらに、AIの活用はすでにウクライナ戦争や中東で見ることができ、「戦争の性質を変えつつある」と付け加えた。 次の戦場で誰が勝者となるかを決めるのはAIだと言われているが、それは「あながち間違ってはいない」とケンドール長官は述べた。 中国などの軍隊と同様に、アメリカの統合軍も軍事開発においてAIを最優先事項とし、自律的に行動できる能力や、意思決定、パターン認識、さまざまな兵器などにAIを組み込む方法を模索している。 例えば米空軍では、戦闘機を操縦するAIエージェントのテストに加え、「協調戦闘機(Collaborative Combat Aircraft(CCA)」や「ロイヤル・ウィングマン」のプログラムで、AI技術などを活用して有人機と連携する無人機の開発を進めている。2024年初頭、ケンドール長官はAIで制御されたF-16に搭乗し、有人のF-16と空中戦(ドッグファイト)のテストを行った。 このテストはプログラムにとって「重要なマイルストーン」であり、「戦闘の自律性に対する信頼」が高まったと当局関係者は述べていた。以前行われたAIエージェントのテストでもその効果は確認されており、AIプログラムが新しいデータ、シナリオ、パフォーマンスに合わせて迅速に調整できることが明らかになった。
Chris Panella