たすきを渡せなかった日大・大橋優の魂のラストパート
「箱根駅伝・復路」(3日、箱根町芦ノ湖駐車場~大手町) 己との戦い。そんなフレーズが脳裏をよぎるラストスパートだった。繰り上げスタートでたすきを渡せなかった日大・大橋優(4年)だ。 【写真】大会スタッフも思わず手を上げて迎えるほど! 魂のラストスパートを見せた日大・大橋優 3日に行われた箱根駅伝復路の戸塚中継所で、首位通過から20分に間に合わず、9区の小路翔琉(3年)が無念の繰り上げスタート。残り約200メートルだった大橋は、誰もいない中継所に向かって最後の力を振り絞るような走りを見せた。たすきを首に掛けたまま、まるでゴールに向かって走っているかのような激走。沿道から声援が飛び、唇をかみしめて見守る警備員の姿や、手を上げて応援する大会スタッフの姿もあった。中継所後方の撮影エリアでシャッターを切り続けた私の胸には、熱いものがこみ上げた。 駅伝は往路と復路で10人の選ばれしランナーがたすきをつなぐ団体競技。日大は往路で期待のランナーが苦戦し、復路も巻き返しができないまま8区の大橋はたすきを受けた。駅伝ランナーにとって、たすきを渡せないことほど悔しく、かっこわるいことはないだろう。しかし、己との戦いを感じさせる“ラストスパート”は、立派だった。かっこよかった。せつなさ、無念さはあるだろうが、きっと、これからの人生の“糧”となるにちがいない。(デイリースポーツ・開出牧)