秋の旬、存在感増すノルウェーサバ すしネタや刺し身で生食も
サバが秋の旬を迎えた。塩焼きやみそ煮、「締めさば」などとして人気は根強い。国内消費の大半を占めるのはノルウェー産だ。冷凍ものだけでなく、今秋からはすしネタ用の生サバもお目見えしている。(時事通信水産部長 川本大吾) 【写真】ノルウェー産サバのにぎりずし ◆国内の漁獲は順調だが… 農林水産省の調査によると、2023年の日本のサバ水揚げ量は約26万1000トンだった。マイワシに次いで多く、不漁続きのサンマ(23年、2万6000トン)の10倍の生産量を上げている。今年の漁獲状況もおおむね順調だ。全国主要漁港における今年のサバの水揚げ量は、9月末まで約14万8000トンで前年並み(漁業情報サービスセンター調べ)。 ただ、太平洋、日本海とも「取れるサバは100~200グラムの小型魚が主体で、脂が少なく味気ない」(魚市場の関係者)という。サバに限らず、魚は小さいと脂が比較的少なく、焼くとパサパサして、おいしいとは言えない。そのため、大半の国産サバは需要が少なく、食用向けに流通しないことから、多くは飼肥料に回されたり、ベトナムやタイのほかアフリカなどに輸出されたりしている。 取れるサバのごく一部には大型魚も含まれ、漁港や東京・豊洲市場(江東区)などで高値取引され、高級すし店などに出回る。そのような大型魚も年々少なくなっているようだ。宮城県の金華山沖で取れた1匹500グラム以上の「金華さば」も「最近はほとんど取れなくなった」と石巻漁港の関係者は嘆く。 ◆13万トンのノルウェー産が日本へ サバの国内需要を満たしているのが、大西洋で取れたノルウェー産だ。在日ノルウェー大使館水産部によると、同国の日本へのサバ輸出量は、2023年が前年比13%増の約6万2000トン。このほか、いったん中国やベトナムなどを経由し、3枚下しや骨抜きなどの加工を施される分を含めると、合計13万~14万トンのノルウェーサバが日本へ送られ、消費されているという。 定食チェーンや持ち帰りの弁当チェーンなどでは、ノルウェー産のサバを使用するケースが多い。サバ文化干しを作る水産加工業者も「脂が乗ったおいしい干物を作るため、原料は国産では賄えない」(千葉県の干物業者)と話すように、ノルウェー産への依存度は高まり続けている。 ノルウェー産も今が旬。同国大使館水産部は、日本航空グループの商社JALUXと連携し、2021年から脂肪率約30%、重量500グラム以上のサバを「サバヌーヴォー」とネーミングして日本へ空輸している。秋限定で、JAL国内線ファーストクラスの機内食や、首都圏のスーパーなどで販売している。 ◆新技術で生食も可能に 今年からは、アルコールを使った「超高速凍結技術」により、生で食べられるノルウェー産のサバがお目見えした。JALUXによると、熱伝導の効率が良いアルコールを使った液体で凍結するとフィレ(3枚下し)やスライスを7~15分ほどで凍結できるため、細胞の破壊が少なく、解凍後もおいしく食べられるのだという。 これにより、ノルウェー産のサバをすしネタや刺し身などでも食べられるようになった。生食用は、首都圏などの量販店や飲食店で順次提供していくという。今後、同国産が日本でますます普及するきっかけとなりそうだ。