『23区格差』著者池田氏に聞く 待機児童問題は施設を増やしても解決しない
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東京都の新しい顔となる都知事選の投開票日が31日に迫ってきました。都知事候補は課題山積の首都東京で、難しい舵取りが求められています。中でも、多くの候補者が重要政策として挙げているのが約8000人にのぼる「待機児童問題の解消」です。 そこで『23区格差』(中公新書ラクレ)の著者で、一般社団法人東京23区研究所所長・池田利道さんに、さまざまなデータから「待機児童」をどのように考えるか、話を聞きました。 私「待機」やめました(1) 夫婦交代制の育児
量的解消だけではいたちごっこ
主要候補者と注目されている鳥越俊太郎、増田寛也、小池百合子3候補はそれぞれ都の待機児童ゼロを公約に挙げました。その実現のため、「保育士の給与・処遇改善」(鳥越氏)「待機児童解消・緊急プログラム策定」(増田氏)「保育所の受け入れ年齢・広さ制限などの規制見直し。保育ママなどの活用」(小池氏)等を掲げます。 ── 保育士の処遇を改善することも、地域に小さな保育所をつくるということ、保育ママの活用も正しいかもしれません。しかし、規制緩和には反対です。なぜなら、一人の保育士が受け持つ子供の数が増え、保育の質を下げることになるからです。 都が7月19日に発表した2016(平成28)年4月1日の待機児童数は8466人。前年度より保育サービス利用児童数は14192人増えましたが、結果として待機児童数も652人増加しました。 ── この数字を見れば、前の舛添都政は何もしなかったのではない、とわかります。いま、昨年から652人増の8466人待機児童がいるということは、昨年の待機児童は7800人くらいだったということ。それに対し1万4千人分の定員の保育施設を増やしたのだから普通は造り過ぎのはずです。それなのになぜこうなったか。それには構造的なからくりがあると考えなくてはいけません。 ── まず第1に待機児童の定義があいまいです。例えば、育休期間中の入所希望者や、保育所の入園を待っている間に育休を過ぎて解雇され、あらたに休職しているような場合は、待機児童に含まれません。これら潜在的な待機児童は、発表されている待機児童の2、3倍いるとも言われます。しかし、この面だけ考えれば、それでも毎年1万数千人ずつ定員が増えるよう保育所をつくったら2年でも解消できることになります。また第2に考えなくてはならないのが、潜在的待機児童にも含まれない人たちがもっといるのではないかということ。つまり、既に、今の状況から出産あるいは結婚すらあきらめてしまっている人たちがいるかもしれない。これは絶対に数字には表れません。