「46歳のスレた僕でも泣いた…」 今期の大好評ドラマ「宙わたる教室」原作はなぜ胸を熱くさせるのか? ピストジャムが解説(レビュー)
胸を打たれた70代の生徒・長嶺の章、そして教師の言葉に売れない芸人の僕は…
とくに長嶺の章がすばらしい。長嶺のせいで授業をボイコットする生徒が出てくるまで悪化したクラスの雰囲気。それが、ある授業をきっかけに一変する。 長嶺が学校に通う理由を知ったとき、涙があふれてきた。その描きかたもニクい。お涙ちょうだいの感じではなく、作中の人物たちが距離感を保ちながらも心を通わせる情景を、語りすぎない少ない言葉で描いていて胸を打たれた。 科学部顧問の藤竹のキャラもいい。頭脳明晰で冷静沈着。個性的な生徒たちを見事にまとめあげる姿は『SLAM DUNK』の安西先生のようで安心感がある。「どんな人間も、その気にさえなれば、必ず何かを生み出せる」という仮説を唱える藤竹。そうであってほしいと願う46歳の僕。 あとがきで、この小説は実話がきっかけで誕生したと著者は語っていた。やっぱり奇跡ってあるんだ、じゃ自分もこれから売れる可能性あるやん、綾小路きみまろさんみたいに52歳でブレイクするパターンもあるし、と自分に言い聞かせて、僕の“実験”はなかなかやりがいがあるなと思った。 [レビュアー]ピストジャム(芸人) 1978年9月10日生まれ。京都府木津川市出身。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。大学卒業後、こがけんを誘って吉本興業の養成所へ入所(東京NSC7期生)。2002年4月にデビューし、「マスターピース」「ワンドロップ」など、いくつかのコンビを経て、ピン芸人となる。アイドルのラジオ番組 MC などでも活躍。下北沢カレーアンバサダー。かまぼこ板アート芸人。2022年『こんなにバイトして芸人つづけなあかんか』(新潮社)を発売。 協力:吉本興業 第一芸人文芸部 Book Bang編集部 新潮社
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