グラディウスからストⅡまで 今も動き続けるレトロゲームの聖地
午前10時の開店時間、店員がブレーカーを上げるとブラウン管に光がともり、乾いた起動音が店内に響く。グラディウス、ゼビウス、ファイナルファイト――。アーケード・ビデオゲーム黄金期の1990年代から約30年がたった令和の今も、往年のゲーム機が稼働し続けるレトロの聖地が埼玉にある。 【写真で見る】大魔界村、エリア88…ハイスコアの数々 平屋建てで仕切りもない広大なスペースに、レトロアーケードゲームの「筐体（きょうたい）」約170台がずらりと並ぶ。画面とスピーカー、コントローラーが一体となった箱形の機器のことで、ゲームデータが記録された基板が取り付けられている。基板を変えれば、さまざまなゲームを遊ぶことができる。 背もたれのない椅子に腰掛け、一心不乱に画面を見つめるのは40代前後の男性ら。100円玉を投入し、高速でボタンを連打しながらレバーを上下左右に目まぐるしく動かしていた。 埼玉県深谷市のゲームセンター「ビデオゲームミュージアム ロボット深谷店」。こうしたレトロアーケードゲームを多数備えたゲームセンターはかつて全国各地で見られたが、近年は減少。「関東で台数が多いのは、他に東京都内の2店舗ほどしかない」と同店の篠崎治主任（51）は話す。 ◇尽きないゲーム愛が原動力 店にある筐体の多くは代表取締役の山崎孝さん（52）が収集したものだ。10代からアーケードゲームに熱中。高校生の時にゲームセンターで働き始めて以来、30年以上ゲーム業界に身を置いてきた。 90年代のアーケードゲームはブラウン管などの故障が多く、収益も上がりにくい。なぜ、店を続けるのか。「景品のような対価がないのに、みんな取りつかれたようにプレーする。ゲーマー同士のコミュニティーが店舗にあったりと、何物にも代えがたい魅力がある」と山崎さんは語る。 「あのゲームは曲が良くて。カセットテープに録音していたもん」 「わいわい“殺気”を出しながら対戦できるから『ストⅡ』（ストリートファイターⅡ）は良いよね」 語れば尽きないゲーム愛が原動力だ。 取材に訪れた9月中旬に来店していた男性（40）もファンの一人だ。「もう死ぬまで続けるつもり。お金を落として店の存続に貢献したい」と、「推し」への愛を隠さない。 同店で現役のエンターテインメントとして遊ばれ続ける往年のアーケードゲーム。「店を持って、夢をかなえたんですね」と山崎さんに尋ねると、「かなっていないです。目標のアーケードゲーム復活は、メーカーが息を吹き返さない限りありえません。この店を旗印にアーケードゲーム好きが集まってきた今、次の一手を考えています」と力強く答えた。【田原拓郎、玉城光祐】
