和歌山田辺「一目30万本」天空の梅林が見ごろに
こういう地形、梅栽培以外はできない
春の訪れを告げる風物詩の梅花は、2月から3月初旬にかけて見ごろを迎える。今回訪れた「紀州石神田辺梅林」ではまだ三分咲きだったが、これから白い花を次第に咲かせ始めるだろう(ブルーのシートは梅の収穫用)。 紀州田辺観梅協会、石神忠夫会長はこう話す。 「ここはこういう地形ですので、梅栽培以外はできない。おそらく江戸後期から始まったんじゃないかと思われます。田辺の城主でありました安藤直次という人が急傾斜での作物の栽培が無理やということで、梅の栽培を奨励したと言われております。それが紀南地方での梅の始まりではなかろうかと言われています」 梅の木は25年の生涯と言われ、ただし、観賞用は古木になればなるほど値打ちが出てくるという。「梅林に入って、自由に弁当を広げてもいいです。花を愛でる人は行儀がいいですから。京阪神から車で来るお客さんが多いですが、北は北海道、南は沖縄からも来られます。一昨年、世界農業遺産になってから、学者さんや外国のお客さんも増えました」とか。
海外からの訪日観光客に梅酒が人気
また、観梅のあとで梅干しや梅酒に触れるのもいいだろう。同じ田辺市にある老舗梅干しメーカー「中田食品」は1897年(明治30)の創業で、梅干し国内売り上げナンバーワン。「梅は落ちるのを待って収穫する」そうで、看板商品の「梅干し田舎漬」をはじめ、完熟南高梅にハチミツを加えて漬け込んだ「はちみつ完熟梅」など各種梅干しがある。完熟南高梅を生かした「紀州の梅酒」も人気だ。 中でも「紀州の梅酒ヌーボー2016」は期間限定で、爽やかな味と言える。そのほか、梅ジャム、梅ふりかけといった加工品など約120種類に及ぶ。梅干しの試食、梅酒の試飲、梅酒づくりの体験、工場見学なども楽しめる。今やタイ、オーストラリア、ハワイ、韓国など、海外からの訪日観光客に梅酒が人気を呼んでいるという。 (文責/フリーライター・北代靖典)