朝ドラ『おむすび』で描かれるギャルマインド 徹底して自分の“好き”を貫くことの象徴に
米田家の呪いが発動し、うっかり苦手なギャルを助けてしまった結(橋本環奈)。それをきっかけに博多ギャル連合(ハギャレン)のメンバーに気に入られてしまった結は、戸惑いながらも彼女たちと友達になった。『おむすび』(NHK総合)第6話からは結のギャルたちとの秘密の交流が始まる。 【写真】プリクラ前でハギャレンと話す結(橋本環奈) ギャルの全盛期だった2000年代初頭。この時期は『egg』や『小悪魔ageha』といったギャル雑誌、藤井みほなによる漫画『GALS!』やドラマ『ギャルサー』(日本テレビ系)など、さまざまなメディアでギャルカルチャーが取り上げられていたこともあり、当時田舎の小学生だった筆者にとってもギャルは憧れの存在だった。 そんな私たちの世代にとって、本作で描かれるギャルカルチャーは胸熱でしかない。ハギャレンのメンバーから送られてくるギャル文字のメールにも「懐かしい!」と声に出してしまうほど思わずテンションが上がってしまった。もはや怪文書とも言えるギャル文字は読解が難しく、変換するのも一苦労なのにみんなこぞって使っていたのを覚えている。あの頃のギャルたちには“コスパ”という概念はなく、好きなことのためなら時間も苦労も惜しまなかった。 筆者をはじめ、当時の若者がギャルに憧れた理由の一つはそのマインドにある。良い意味で自分本位だけど、義理と人情に厚く仲間思い。そんなギャルマインドが詰まった掟を、結はハギャレンのメンバーたちから教えられる。 その1「仲間が呼んだら、すぐに駆けつける」。これに関しては、ルーリー(みりちゃむ)から送られてきた大袈裟なメールのせいで不本意にも達成してしまった結。だが、その2「他人の目は気にせず、自分の好きなことを貫く」と、その3「ダサいことはしない」に関してはどうだろう。結はハギャレンのメンバーと友達になり、土日は彼女たちと一緒に過ごすようになったが、家族にも学校の友達にもそのことを秘密にしている。 風見先輩(松本怜生)が書道の展覧会に誘ってくれたにもかかわらず、途中で帰ってしまったことを詫びるときも、「ギャルを助けに行った」とは言えなかった結。書道部にはギャルが苦手な部員が多く、風見先輩もそうだろうと結は勝手に決めつけてしまっている。だけど、「一」の書き方を練習している結に、一番好きなものを考えながら書くようにアドバイスしてくれた風見先輩が他人の“好き”を否定するだろうか。 父の聖人(北村有起哉)は歩(仲里依紗)のこともあって過干渉気味で、結が心配をかけたくないのも理解できる。だけど、隠せば隠すほど親は心配になるものだし、娘が自分のせいでやりたいことに蓋をしてしまうのは聖人も本意ではないだろう。優しいことはいいことだけれど、結は相手の気持ちを想像して「こうだ」と決めつけ、そのせいでがんじがらめになってしまっているように見える。そんな中、ハギャレンが「糸島フェスティバル」のアマチュアパフォーマンス部門で披露するパラパラショーに誘われる結。当然断るが、ルーリーから一緒に撮ったプリクラを実家に送ると脅迫されてしまう。少々強引なやり口ではあるけれど、このパラパラが、結が自分の気持ちに素直になる一つのきっかけになるといい。
苫とり子