トロフィーを抱えて揺らす10秒のための(後編)(Bリーグ・名古屋ダイヤモンドドルフィンズ 中東泰斗)
昨シーズンあたりからポイントガードとしてもプレーする時間が増えてきた中東。 主体の中央部として、判断を下す機会は今後さらに多くなっていく。 「僕がポイントガードとして入ることでディフェンスでオールスイッチができたり、いろいろな引き出しが増えるので、ショーンさんの中に戦術の一つとしてあったのかなと思っています。 昨シーズンは練習中にガードをやることはあまりなくて、ぶっつけ本番で試合でやることが多かったので、プレーコールとかもあまりできなくて、流れのままやってたんですけど。今年は練習中から僕とか今村(佳太)選手がやることも増えているので、だんだん板についてくるんじゃないかと思っています。」 話を聞いているとチームは大変に柔軟でおおらか、新自由主義的な風潮が感じられてなんとも適度な印象だが、実際のところはそう単純ではないようだ。 いつだって人は自由を欲し、自由を得た結果、不自由を感じる、みたいなことをおっしゃっていたのは夏目先生だったような。 「主体性があり過ぎるがゆえに難しいんですよ。ここのレベルにまでは来てほしい、っていうラインはやっぱりあって。(今シーズンは)新加入選手も多いのでショーンさんのバスケを理解するのにもなかなか時間がかかるし、噛み合ってくるにも時間が必要だと思います。」 そこで中東の出番である。 チーム在籍年数は最長、今季は押しも押されもせぬキャプテンなのである。主将である。リーダーである。 「(新加入選手と)そういうところをいろいろコミュニケーションを、なるべく多く取るようにはしています。あとは英語もちょこちょこ喋れるので外国籍選手ともコミュニケーションをよく取るようにしています。 去年はほとんど日本人メンバーが(その前のシーズンと)一緒だったこともあってやりやすさがあったんですけど、今年は5人、新加入選手が入って、半分近くのメンバーが変わりました。なのでそこは今、まだ我慢の時期かなとも思っています。」 3年のあいだ、こつこつと深めてきた解釈は任意に出し入れが可能で、それがまた他人の理解を促すことでもあるのだから経験というものはありがたい。 選手だけではなくデニスHCとも「戦術的な話とか、チームの雰囲気の話とか。ここをこうした方がいいんじゃないか。」などなどについてフランクに意見を交わす頻度が増えた。 新しい戦力、新しい役割。 先だってのAICHI CENTRAL CUPでは納得の結果を収められなかったものの、そこで見せた明るい可能性は昨年以上を期待させるに十分で、その実現は今の我慢、基盤づくり、相互理解、しんどさやままならなさの先にあるものなのだろう。
石崎巧