杉下右京を最も苦しめた犯人は? 『相棒』史上最強の敵キャラ(3)殺した人数は史上最多…心優しい極悪犯とは?
『相棒』シリーズでは、2000年から現在に至るまで400話以上ものエピソードが作られてきた。今回は様々な犯人が登場する『相棒』シリーズの中でも、杉下右京を最も苦しめたサイコパスの犯人を紹介していく。劇中の人気キャラである精神科医の内田美咲(奥貫薫)の言葉「悪は人を魅了する」を踏まえ、彼等に少しだけ魅了されてほしい。第3回。(文・Naoki)
11人殺し・北一幸(演:野間口徹)
表向きは司法書士だが、その裏で快楽の為に殺人を行うシリアルキラー。特に美しい女性に対する執着には身の毛もよだつものがあり、殺害時に顔を切り刻むといった残虐な嗜好をもっている。 そんな彼は2度登場。初登場はシーズン14「陣川という名の犬」。 末期癌と診断され余命2ヶ月の宣告を受けた北は、5年前に5人もの女性を殺めていた。余命いくばくもないことを知ると、「本当に殺してみたかった女性」に照準を絞り、新たに3件の殺人事件を起こす。ほどなくして、捜査一課により逮捕されるも、その中の1件で別の人物の罪を庇っていたことが特命係により暴かれる…。 2度目の登場はシーズン15「ギフト」だ。 治療で奇跡的に一命を取り留めた北だったが、病院から逃亡。前回の事件で「誰かの為に人を殺す」ことに快楽を覚えるようになり、獄中で支援者から依頼された殺人行為を粛々と行い、新たに5人を手にかける。そして、6人目を拷問し殺害する寸前で特命係により逮捕された。 北の魅力は“矛盾した2つの要素”を持ち合わせているという点にある。 上述したように、かねてから北は、殺害後に”美しい女性”の顔を切り刻むことを好む一方、2回目の登場以降は、誰かの為に殺人を犯し、依頼者から感謝されることに快感を覚えるようになる。 人を人とも思わない残虐性と感謝されることを求める善人性。その2つの顔をもった北は、『相棒』シリーズの単独犯では最大となる11人もの犠牲者を生んだ。 作中で彼は性同一性障害に悩んでいた男性を殺害し、彼の顔を性別の区別がつかないほど激しく切り刻んで「アナタは美しい女性である」と優しく肯定するような犯行にも及んでいる。 やっていることは残酷きわまりないが、発しているメッセージは優しい。矛盾した2つの面を共存させた北には、おぞましさと同時につい魅力も感じてしまう。
Naoki