孤立した牧場 空から救う 石川・能登町の畜産農家 NPOがドローンで水運搬
石川県の能登半島地震に見舞われ孤立状態になった能登町の牧場に埼玉県加須市のNPO法人がドローンなどを使って水を供給し、牛の飲み水が枯渇していた牧場の窮地を救った。小回りの利くドローンの機動力を生かして水を届けた。 【画像】寸断された道の手前から水を運搬するドローンと水の補給を受け助かった牛たち
涙出るほどうれしかった
ドローン運搬を主導したのはNPO法人市民航空災害支援センターの理事長で、ヘリコプター操縦免許を持つ竹田好孝さん(61)。 能登町の要請を受け、牧場への運搬方法を検討。民間で使えるヘリだと機内が狭く、まとまった量の水は積めないが、林業用ドローンなら可能と判断。林業現場で活動する滋賀県守山市のドローンオペレーター、馬渕信幸さん(35)と1月、現地に入り水を届けた。 牧場は寸断された道路から森林を挟んだ1・2キロ先の山頂にある。ヘリで水の受け取り役を搬送した上で、最大搭載重量25キロのドローン「森飛25」で2リットル入りペットボトル6本を計40回運んだ。竹田さんは「ヘリよりも低コストで何回も往復できる」と話す。 牧場主の駒寄正俊さん(70)によると、停電で地下水がくみ上げられず、蓄えていた水は3日で尽きた。約100頭を肥育しており、牧場周辺の雪を集め一定量の水を確保するも、繁殖牛2頭、子牛1頭が死んだ。 「水が届いた瞬間は、涙が出るほどうれしかった」。駒寄さんはそう振り返る。 牧場への水の搬送は1月半ばの1日で、その後は道がつながり水が運べるようになった。90頭近くは他の牧場に避難させたり食肉処理に回したりした。残る5頭は6日に牧場から運び出す予定だ。
農業以外も活躍
農業以外でも同法人は、孤立した福祉施設にある利用者のカルテや個人情報の入ったノートパソコン、プリンターなどの確保にドローンを活用した。 避難先での診察などにカルテが必要だが、パソコンやプリンターがないと医療関係者に提供できなかった。ヘリでは一度に運び出すのも難しいため、ドローンで運搬した。(丸草慶人)
日本農業新聞