国際NGO職員が国会前デモに参加して感じた「違和感」とは
9月19日、安保関連法が参議院本会議で成立した。法案審議中の国会前では連日反対派のデモが繰り広げられ、法案に反対する学生団体「SEALDs」の活動も注目を集めた。 そんな中、アメリカなど国内外で社会変革運動に取り組んできた国際NGO職員の日本人男性も国会前デモに参加したが、その方法に違和感を覚えたという。長年海外で市民による社会変革運動を支援してきた男性が感じた「違和感」とは何か。その「違和感」から、日本の「市民運動」が抱える根本的な問題が見えてきた。
抗議活動の「対話しない姿勢」に強い違和感
神奈川県在住の国際NGO職員、鈴木洋一さん(29)は大学卒業以来、世界90カ国以上で活動する国際NGOのスタッフとして日本やアメリカなど各国で働いてきた。途上国の貧困問題の解決のため、学生や一般市民の署名運動や市民を巻き込むキャンペーンなどを展開。市民運動を盛り上げることで、先進国の政府や国際機関の政策決定者に働きかけ、政策提言に関わってきた。 「安全保障上の重要性は理解できるが、(改憲という)正しい手順を踏まない今回の法案は許せなかった」との立場から、今回の安保関連法案には反対だった鈴木さん。自らプラカードを作り、国会前の抗議に参加した。しかし実際に国会前の抗議に参加してみると、「憲法守れ」というコールには賛同できても「安倍辞めろ」と言うコールには同調できず、強い違和感を覚えたという。 「安倍首相を支持している訳ではありません。でも、この法案に対する抗議で言うことではないと思ったんです」。抗議参加後、鈴木さんが開いたNGOのイベントで出会った年配の男性が「あいつら無礼だよね」とつぶやいた。この言葉に、鈴木さんは共感したという。 鈴木さんが違和感を持った理由は、国際NGOのスタッフとして多くの国の社会運動を見ていくうちに、社会変革には中道派を動かすことが不可欠だと知ったからだという。「国際協力のイベントに参加する学生の多くが、『デモが怖い』とか『デモをして意味があるのかな』と言っている。こうしたデモに参加しない人達に対するアプローチを考えないと、勝てるものも勝てないのではないか」と指摘する。 「問題は、安保法案反対派が対話を求めていないところです。安倍政権が対話しない姿勢だからといって、自分も対話しない姿勢で良いのでしょうか。そのような姿勢で、公明党穏健派や自民党内にいる穏健派を、どのように切り崩すつもりなのだろうかと疑問に思った」