メタが欧州で行なう新たな「AIの訓練」が法的問題に直面
メタの新たなプライバシーポリシーは、人工知能(AI)モデルのトレーニングにユーザーの個人データを使用する同社の計画をめぐり、欧州11カ国で法的問題に直面している。 同社は最近、2007年以降に収集した公開および非公開のユーザーデータをAIモデルのトレーニングに使用することを認める新たな利用規約を導入した。メタはこの規約が、現行のプライバシー法で許容されるとしている。 「当社の取り組みは、英国のデータ保護法およびEUの一般データ保護規則(GDPR)の下で、欧州地域および英国における特定のファーストパーティおよびサードパーティデータの処理について、AIを改善するという『正当な利益』という法的根拠に基づいている」とメタは述べている。 「これらのサービスを構築するためにデータを処理することには正当な利益があり、ユーザーは希望する場合はプライバシーセンターにあるフォームを使用して異議申し立てができる。このアプローチは他のテクノロジー企業がヨーロッパでAI体験を開発し、改善する方法と一致している」と同社は主張している。 しかし、プライバシー保護キャンペーン団体のNoybは、フェイスブックやインスタグラム、スレッズに適用されるこのポリシーが、メタが主張するほどにはコンプライアンスに則していないと述べている。同団体は、6月26日にこのポリシーが施行される前に、欧州11カ国のデータ保護当局に緊急手続きを開始するよう要請した。 使用されるデータには、休眠状態のフェイスブックのアカウントや、第三者からの追加情報、オンラインソースからスクレイピングされたデータが含まれるという。個人間のチャットのみは適用除外となる模様だ。
明らかなGDPR違反
一方、Nyobによると、メタのこの取り組みは、GDPRの要件に反して、データの使用目的であるAI技術の用途を、ユーザーに一切知らせないという。この変更は、世界中の約40億人のメタユーザーの個人データに関わることから、特に懸念される。 ■明らかなGDPR違反 「メタが言っているのは、基本的にどのようなソースからのデータでも、あらゆる目的に使用可能で、それがAI技術を介して行われものである限り、世界中の誰にでも提供できるということだ。これは明らかにGDPRに違反している」とNyobのマックス・シュレムスは述べている。 「彼らが『AI技術』と呼ぶものは、非常に広範なもので、法的な制限は実質的には存在しない。メタはデータの用途を明らかにしていないため、チャットボットや非常に攻撃的なパーソナライズ広告、あるいは殺人ドローンなど、あらゆる用途にデータが使用される可能性がある。また、メタはユーザーデータを第三者に提供できると述べている。つまり、世界中の誰もがユーザーデータにアクセス可能になる」 Nyobは、オーストリアやベルギー、フランス、ドイツ、ギリシャ、イタリア、アイルランド、オランダ、ノルウェー、ポーランド、スペインのデータ保護当局に要請を行った。新たなポリシーが施行されるまであと数週間という事実を踏まえ、NyobはGDPR第66条に基づく「緊急手続き」を要請した。これにより、データ保護当局は仮差し止め命令を出すことが可能だ。 「アイルランド以外の当局が迅速に行動し、少なくともこのプロジェクトを完全に調査するために停止させることを願っている」とシュレムスは述べている。 「欧州データ保護委員会(EDPB)はすでに、メタとアイルランドのデータ保護委員会に対して、同様の緊急措置を2回発令している。このような措置が何度も必要になるのは悲しいことだ」とシュレムスは続けた。
Emma Woollacott