<BOX>井上弟が初王座奪取も兄は「俺に並ぶのはまだ早い」と苦言
父で専属トレーナーの真吾さんも、「見すぎたね。悪い癖。3回ほど倒すチャンスがあったのに。もっとフェイントと、上下にパンチをランダムに打つなどしていかないとね。プロに入ってから尚弥は、変化した。そういう対応力が高まったが、そこのところが、まだ拓真には足りないところかもしれない」と、兄と比較して今後の課題を与えた。 5月30日に高校時代のライバルだった田中恒成(20歳、畑中)が、プロ5戦目でWBO世界ミニマム級王者となった。兄の作った6戦目世界王者の最速記録を破られた。 「高校時代からライバルだったので、刺激というか、ここで俺は負けられないと思った」 拓真にしてみれば、田中は兄の存在以上に気になるボクサーである。いつか階級がそろってくれば、再び両者が拳をあわせる日がくるのかもしれない。、 もう最速世界奪取の記録が消えてしまったこともあって、大橋会長は、今後の世界挑戦については慎重な考え方。ひとつ防衛戦を挟み、世界挑戦のチャンスを伺うプランで、兄と同じくスーパーフライ級での世界戦実現を模索していきたいという。 拓真も、世界戦についての気持ちを聞かれると、「これで(ベルトを巻いたことで)いつでも世界挑戦の環境は整った。課題を克服して、チャンスをもらったときに一発で取れるように準備をしたい」と答えた。 苦しんだ末の戴冠も、大きく羽ばたくための試金石と考えれば、大橋会長の言うように「意義のある試合」だったのかもしれない。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)