日本の人口減少は4度目だった……今回は「未曾有」 なぜ人が増加しないのか
人口減少は過去にもあった
この原稿を準備している10月下旬、ダン・ブラウン原作による映画『インフェルノ』が公開された。人口爆発によって人類が滅亡することを怖れた生化学者ゾブリストの企みを阻止しようとするラングドン教授の活躍を描いたものだ。ヨーロッパの都市をめぐる追跡劇は面白い。しかしこのテーマは40年前ならまだしも、多くの先進国で人口減少に直面しているいまでは、古臭いテーマのように見える。 私は21世紀に始まった人口増加停止への道程を、決して異常事態とは考えていない。第1に過去にも人口減少が起きた時代は何回もあったからだ。飢饉、疫病、災害が原因となった場合もあるが、それは短期的な変動で終わった。多くの場合、人口を増加させられない社会の構造的な問題に真の原因があった。第2に少子化は日本だけではなく、先進国はもちろん新興工業国でも起きていることである。しかもそれが先進諸国で始まったのが、1970年代でほぼ同時だったことは意味深長である。 まず日本列島の過去1万年間の人口推移を見てみよう(図1)。これは何人もの研究者が推計した過去の人口と近代統計を結んで作ったものである。もちろん近代になってからの増加は激しかったのだが、過去に何回も大きな人口増加期があった。しかしそれはいつまでも続かなかった。大きな増加の後には、短いが明瞭な人口減退期があったのである。日本列島の場合、縄文時代後半、平安~鎌倉時代、江戸時代中期(18世紀)が、人口増加が停止、あるいは減少した時代だった。これからやってくる人口減少期は第4回目になるのだ。
人口が増加と減退を繰り返しながらも、長期的に増加するというパターンは、多くの国で観察されている。そして世界人口についても人口波動は認められるのだ(図2)。ここではマキーブディとジョーンズ、ビラバンの2種の推計から計算した期間増加率(年率%)を示している。2つの推計では程度の差はあるものの、3~4世紀、13~14世紀、17世紀で人口増加率が低下していた。国連推計によれば、20世紀の人口増加率は史上稀な大きさだったが、21世紀には大きく低下すると予測している。