2人で“推しチーム”を決める『ぼくとパパ、約束の週末』モデルとなった父子のインタビュー到着
サッカー大国ドイツから届いた父子の物語『ぼくとパパ、約束の週末』が11月15日(金)より公開。この度、本作のモデルとなった実際の父子のインタビューを独占入手、2人からのメッセージ動画と新たな場面写真も到着した。 【画像】実際のミルコ&ジェイソン・ユターツェンカ父子 主人公は、全56のサッカーチームを自分の目で見て、“推しチームを決めたい”とドイツ中を旅する自閉症のジェイソン。そして、 多忙な仕事の合間を縫ってジェイソンと共に旅をする父のミルコ。 2人の実話をもとに作られた本作はドイツ本国で公開されると、メジャー作品を押さえ100万人を動員する大ヒットを記録した。 今回、日本公開直前のタイミングで実際の父子のインタビューが到着。息子のジェイソン・フォン・ユターツェンカと父ミルコ・フォン・ユターツェンカは、現在もスタジアム巡りを続けており、本作中でもワンシーンで出演もしている。また、ハリウッドでリメイクを制作するプロジェクトも進行中とのことで、映画の撮影についてや現在の心境などを聞いた。 ジェイソン&ミルコ父子 インタビュー ≪取材・文/吉田可奈≫ ――映画『ぼくとパパ、約束の週末』は、お父さんのミルコさん、自閉症の息子さんのジェイソンさんの実話をもとにした映画となります。今回映画化する際に、ミルコさんが一番大事にしたことを教えて下さい。 ミルコ・フォン・ユターツェンカ(以下ミルコ):映画化のお話を頂いたときに、重要だと思ったことは3つありました。1つ目は、内容が歪んで伝えられないこと。2つ目はジェイソンのキャラクターが正確に再現されること。そして3つ目は苦しむことを見せる映画ではなく、観てくれた方が楽しいと思える作品にするということでした。 とくに2つ目のジェイソンのキャラクターでは、彼がどのような才能を持っているか、そして彼がこだわる“持続可能性”や環境に対する情熱、我慢できることとできないことなどを、しっかり正確に伝えることを大事にしてほしいと制作サイドに伝えました。 ――実際に映画のなかに存在したジェイソンを見て、どう感じましたか? ジェイソン・フォン・ユターツェンカ(以下ジェイソン):僕が最初に見たシーンは、電車の中で食事をするシーンでした。劇中でジェイソンはパスタとソースがくっついてしまい、パニックになってしまうんです。そのシーンがあまりにも現実と同じで、僕自身、恥ずかしくなってしまうくらいで(苦笑)。でも、それくらい迫真の演技だったんです。他のシーンには ポジティブなシーンもありましたし、全体的に素晴らしいと思いました。なによりも、自分のキャラクターを、客観的にみることができたのも、すごく良い経験になりました。 ――電車でパニックを起こしてしまうシーンでは、お父さんは周りの理解を得られず、周りの人に対して怒りますよね。ミルコさんは、ジェイソンさんの障碍をどのように受容してきたのでしょうか。 ミルコ:僕がミルコの障碍を受容できるようになったのは、ふたりで旅をし始めてからだと思います。僕も、妻も自閉症と向き合うのは初めてだったからこそ、最初は、間違った対応をたくさんしてしまいました。それこそ、パスタとソースが触れて、パニックになり、何も知らない周りの人たちからいろいろ言われたときは、どうしていいかわからなかったんですよね。 でも、今の私たちは、周りの言うことなどどうでもよく、ジェイソンがやりたいようにやらせてあげられるようになりました。というのも、自閉症の人が、社会において、きちんとした立ち位置、居場所を得なければいけないと思っているので、その第一段階として、親である私たち夫婦が、ジェイソンそのものをまるっきり受容しなければいけないと思ったんです。 その決意は確固たるものなので、その気持ちが揺らぐことはないですね。現在、大人になったジェイソンは自立し、遠い地域に離れて暮らしていますが、もし私たちの助けを求めているのなら、すぐに飛んで行って助けてあげたいと思っています。 ジェイソン:こうやって助けてくれた両親がいることに、僕はすごく感謝しています。でも、自閉症の人も1人の人間とし て、まっとうな権利をもっているからこそ、要求が満たされて生きる価値、自分が生きやすいように生きる権利があるんで す。それに、お父さんは全部のサッカーを見て、推しのチームを決めることを約束してくれたので、その約束は守らなくちゃいけないから、そこは感謝というよりも、当たり前のことですよね。 ミルコ:おいおいおい!(笑)長距離の会場まで付き合ってあげているんだからそこは感謝してほしいんだけど!(笑) ジェイソン:あはは。 ――さて、おふたりは映画の本編にもゲスト出演をされていましたよね。撮影はいかがでしたか? ミルコ:実は、この映画化の話が出たときに、もし実現し、私たちが思うような素晴らしい映画だったら、私たちふたりも出演したいとお願いしていたんです。実際に出演が決まり、30秒ほどのセリフを頂いたんですが、驚くほど上手く話せなくて!(笑)そのせいで、私のシーンだけで何時間も撮影をしたんです。その間、ジェイソンや、ジェイソンを演じたセシリオくんが近くで遊んだり、スタッフさんが毛布を持ってきてくれたりといい休み時間になっていて(笑)。 ジェイソン:お父さんは、撮影の前の夜からその4センテンスのセリフを一生懸命練習して寝たんです。それでもセリフを 忘れたり、言い間違えたりしていて、“4つしか文章がないのにそんなに大変だったのか”ということがとても印象的でした。 ミルコ:頑張ったんですけどね(笑)。 ――その苦労が実り、素敵なシーンに仕上がっていたので、観てほしいですね。さて、今作はハリウッドでのリメイクも決定しましたね。 ミルコ:とてもうれしいです。アメリカでも、私たちのメッセージを伝えられることに大きな意味を感じています。ただ、アメリカでは“自閉症の治療”というものが経済活動のひとつになっていて、生まれ持った特性であるにもかかわらず“治る”と謳っている機関がたくさんあるんですよね。それはわたしたちとは違う見解であるので、間違った情報として伝わらないように制作してもらうように考えています。 さらにマーク・ウォールバーグが私のことを演じてくれると知って、妻はすごく喜んでいます(笑)。 ――ちなみに、ジェイソンさんは日本代表チームに対してはどんな感想を持っていますか? ジェイソン:1人1人の選手についてはまだ知らないんですが、チーム全体としてはとても良いチームだと思っています。なかでも、カタールでのワールドカップの時に、ロッカーを綺麗に片付けたり、メッセージを残していたりと、謙虚さや社会に対する共感、思いやりというスピリットがとても素晴らしいと思いました。それもあって、いまは日本のナショナルチームのユニフォームが、唯一欲しいと思っているユニフォームなんです。いつか手に入れたいですね。 なお、2人からはメッセージ動画も到着。ともに本作の日本公開を喜び、ミルコは「事実がありのまま伝わるようジェイソンとわたしは全力を尽くし、ものすごく密接に制作に関わりました。だからものすごく喜んでいただいて、できたら続編もお見せできたらと願ってます」と語り、ジェイソンは「この映画によって、今の社会が日本の自閉症の人たちにとって、少しでも理解に満ちたものになれば本当に嬉しい」と願いを込めたコメントを寄せている。 『ぼくとパパ、約束の週末』は11月15日(金)より新宿ピカデリー、角川シネマ有楽町ほか全国にて公開。 劇中の父と息子、後ろに座っているのが実際のミルコとジェイソン父子 (c) Wiedemann & Berg Film / Photo by Nik Konietzny 実際のミルコ&ジェイソン・ユターツェンカ父子<2023年撮影> (c) Credits beachten: Sabrina Adelina Nagel, siesah.de (Können textlich ins Bild eingebunden werden) 実際のミルコとジェイソン父子<2017年撮影> (c) Sabrina Adelina Nagel, siesah.de (Können textlich ins Bild eingebunden werden)
シネマカフェ シネマカフェ編集部