秘密兵器「クリケット・バット」が、「大谷翔平」の打撃を完全復活させた“本当の理由”
自然に身体が反応する
大谷がクリケット・バットで練習した時、おそらく140㎞いや120㎞を超えるような速いボールは打っていないだろう。山なりのボールをミートして、打撃の感覚をつかむような練習だったと想像できる。遅いボールなら、身体を左右に動かしてタイミングを取る必要はない。しかも、バットが重いから、どっしり構え、打つ前に予めボールを捉え、打つべきポイントに来た瞬間に反応してスイングする。その感覚を大谷は思い出したのではないだろうか。 実際、クリケット・バットで練習した後にレフト方向に打った第3号の打席では、身体の左右の動きが消えている。真っすぐに立ち、軸をぶらさず、やや遅れ気味だが、自然にバットを出してボールを弾き返している。その日のヒットも同様だ。大谷が意識して改善したのか、身体が勝手に思い出したのか。いずれにしても、間違いなく理想に近づいたという意味で、「クリケット・バットの効果はあった」と歓迎していいだろう。ボールを打ちに行くのでなく、「ボールを捉えてから自然に体が反応する」、自然体の大谷が復活すれば、この時こそホームラン量産が期待できるだろう。 スポーツライター・小林信也 デイリー新潮編集部
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