「あなたの番です」異例2クール目に突入 連ドラ生き残りの秘策は?
重要な役で新たに横浜流星が登場
原田知世と田中圭のダブル主演で4月からスタートしたドラマ「あなたの番です」(日本テレビ系、日曜22時30分)が、6月30日放送の第11話から「あなたの番です-反撃編-」として新章に突入した。マンション住民たちの交換殺人ゲームから始まるミステリーだが、同局では2クールにわたる連ドラは1994年の「静かなるドン」以来25年ぶりという。 秋元康氏が企画・原案を手がけることでも話題になっていた同ドラマだが、4月からの1クール目は、数々登場する壊れ気味のキャラクターたちの面白さ(怖さ)と謎解きの興味が相まって、うまく新章へとつないだ。“反撃開始”の11話では、最愛の妻・菜奈(原田)を失った主人公の翔太(田中)が、新たに引っ越してきた居住者でAIの研究をしている大学院生の二階堂(横浜流星)に急接近し、犯人探しの協力を求める。天真爛漫キャラだった翔太が復讐の鬼と化すが、その豹変ぶりを田中がどのように演じるかも見どころ。
2クールの連ドラは成功するか
現在、民放プライムタイムの連続ドラマは基本的に1クール(約3ヵ月)完結で、全10話前後にまとめられるものがほとんど。80年代あたりはまだ2クール全20話前後のドラマもあったが、90年代に入ってからは1クール完結が主流になった。とかくテレビドラマは世の中の傾向を反映するが、昭和と比べて平成はバブルも経て、ライフスタイルなどいろいろな面でスピード化するとともに娯楽も多様化。昭和のようにテレビを囲んで一家団欒という景色は、過去のものになった。ビデオも普及したことで録りためた番組を週末など都合のいい時間にまとめて観る視聴スタイルも増え、のんびりドラマを味わって楽しむというより、わかりやすく速攻性がある、より刺激的なドラマが時代にフィットしてきたと言えるだろう。放送が長期間に渡るドラマは、視聴者の興味をつなぎとめることが難しくなった。 1クールのドラマなら、もし失敗したときのリスクも1クール分で収まるが、この時代にあえて2クールに挑むのは制作側にもそれなりの勝算や意図があってのことだろう。「1クールのドラマは日本の特徴で、世界標準ではない。たとえば海外に番組を売るとすれば、2クールのほうが売りやすい」(民放放送局の50代男性関係者)という声も聞こえてくる。物語を1章・2章と章分けを明確にして展開を変えるとともに、2クール目から新キャストを投入するなど飽きさせない工夫も見られる。実際、放送のたびネットでの推理合戦はメディアも含めて盛り上がっており、話題になっている。昭和の昔にはドラマの話題はお茶の間でまず盛り上がって、翌日に学校や職場で共有し合った。それが、今は匿名で意見も言いやすいネットで盛り上がり、ドラマの新しい楽しみ方を広げている。ネット配信では過去のドラマや2クール以上ある海外のドラマなども好きな時間に視聴でき、2クールドラマを試みるには今が適したタイミングと言えなくもない。 そんな背景を考えると、「あなたの番です」のようなミステリーは作り方次第では視聴者の興味を引っ張り、2クールの視聴に耐えうるジャンルと言えそうだ。番組はネット配信でリピートすることができ、気になるシーンもデジタルの高画質で何度でも確かめられる。ストーリー展開を自在に追って検証することもできるし、画面内に謎解きのヒントを入れておけば、それを探す楽しみもある。ある種、ゲーム性を帯びていると言っていいだろう。いずれにしてもこれからのドラマは、1クール、2クールに限らず、ネット環境のもと視聴者参加のゲーム性を持つことが一つの方向性として考えられるのではないか。「あなたの番です」がどこまでその可能性を見せてくれるか、「反撃編」にも注目していきたい。 (文・志和浩司)