退職金をもとに資産運用することを考えていますが、認知症になった場合の手続きが心配です。対処法はありますか?
退職金を投資して、老後資金を増やすことを考えている方も少なくないでしょう。 しかし、認知症になると、銀行や証券会社に開設した口座は凍結される可能性があります。今回は、老後資金の資産運用時における認知症対策について解説します。
認知症になると口座が凍結される
銀行や証券会社に開設している口座は基本的に、本人が認知症になると凍結されて、引き出すことができなくなります。その対策として、本人が認知症になる前に「家族信託」や「任意後見制度」を利用して、資産の管理を任せる人を指名することができます。 また、本人が認知症になったことで凍結された口座にある資産を、本人のために利用する唯一の方法が成年後見制度です。
家族信託を利用する
家族信託とは、信託法(平成18年法律第108号)に基づき、認知症に備えて家族(子どもなど)に財産管理を委任する契約(信託契約)を締結する制度です(※1)。
家族信託を利用するためには、本人が委託者となり、受託者である家族に財産の管理権を委託し、受託者である家族は受益者である本人のための生活費や介護費用などを支払うことを内容とする信託契約を結ぶ必要があります。 家族信託の契約が成立すると、契約成立以降は本人に代わり、受託者となる家族が資産を管理することになります。なお、信託銀行などに資産管理を有償で委託する「商事信託」という方法もあります(※2)。
成年後見制度を利用する
成年後見制度は、高齢などの理由により判断能力が衰えた人あるいは判断能力を失った人を支援・保護する制度で、「任意後見制度」と「法定後見制度」の2つに区分されます。 ◆任意後見制度を利用する 任意後見制度は、任意後見契約に関する法律(平成11年法律第150号)に基づき、本人の判断能力が不十分な状況になったときの財産管理などの後見事務(代理権)の内容と、後見をする人(任意後見人)を、本人自らが十分な判断能力を有するうちに、事前の契約によって決めておく制度です(※3)。