〈またトラ〉勝利演説の壇上に「アジア系ゼロ」でどうなる日米関係? トランプー石破「5分の電話会談」の内容
生々しすぎて笑いにするのが難しかった
6日夜はその後、いろいろなご縁が巡り巡って、NY在住のスタンダップ・コメディアンの村本大輔さんらと会うことになった。ニューヨークのスタンダップコメディのライブを一緒に観に行こうというのだ。 Fat Black Pussycatという聞くだけでヤバいライブ劇場。何と大胆なお誘いか。僕の能力では本場の速射砲のようなコメディにはとてもついていけない。何とジャズクラブのブルーノートの真正面にある。 そして、なぜか映画監督のNさんまでいるではないか! コメディの内容がうまく理解ができず、正直拷問に近い状態だったが、それでも経験したほうがいいのだ。暗黒の選挙結果の翌日だというのに、トランプネタはほとんど封じられていた。 バーでコメディアンの仕切り格のMax Fineさんと偶然に会えたが、なぜトランプネタをやらなかったのかと聞いてみたら、「生々しすぎて笑いにするのが難しかった。それに今夜に限って言えば、会場のお客の中にトランプ支持者がいないとも限らず、安全上の理由から、自然にみんな控えたんじゃないだろうか」とのこと。 彼自身は選挙結果に「本当に心が折れるような気持ちだ」と話していた。笑いを楽しめるような夜ではなかったということだろう。
基地の駐留経費を日本からもっとふんだくれ
さて、トランプと日本はこれからどう付き合っていくのかだが、僕にはわからない。おそらく政治も経済も外交も大混乱に陥るだろう。トランプという人は予測不能な人物だ。 私たち日本は、混乱の中で右往左往するしかないのか。アメリカのトランプと心中するしかないのか。 そうではないだろう。アメリカの動向に受け身でどうするかを考えるよりも、自分たちがどうしたいかを自立的に(従属的にではなく)見解を持つことが先決ではないのか。しかし、そういうことを日本の政治家や外交官たちがやるのは実に稀だ。 その点で日本人である筆者が考えている希望は、<対米従属から対米自立へ>の一歩がわずかであっても踏み出せるか、だ。ところが石破首相から伝わってくるのは、これまでと同様の受け身の姿勢だ。今回の選挙結果についてニューヨークタイムズ紙は、7日付の社説で「アメリカは危険な選択をした」とはっきり述べている。 具体例をたったひとつだけ挙げておけば、沖縄の在日米軍基地の駐留経費の負担増については、トランプ政権の基本方針は、基地の駐留経費を「日本からもっとふんだくれ」だ。 トランプ・石破の電話会談が行なわれたそうだ。「日米同盟をより高い次元、段階に引き上げていくことで一致」とかが官邸の発表文らしいが、本当にそういう話ができたのだろうか。 電話をしたのが日本時間の7日午前9時半ということは、アメリカ東部時間の6日午後7時半。トランプ周辺は祝勝気分で盛り上がっている最中だろう。5分程度の会話というが、通訳を入れてだと半分以下の時間になる。 双方の挨拶から入るので実質2分あったかどうか。そのなかで、日米同盟のより高い次元への引き上げ云々などという実質的な言葉が交わせたのかどうか怪しい。 そんなトップ交流より、日米両国の市民レベルの交流(核兵器廃絶運動や文化交流の積極推進)がより盛んになる方が、実質的な日米関係の「高い次元への引き上げ」につながるのではないか。 7日の朝、『DemocracyNOW!』のエイミー・グッドマンに会うことができた。彼女は落ち込んでいるどころか、トランプ時代の再到来で自分たちの役割がいよいよ増してきたことを覚悟しているようにみえた。 日本のメディアはどうなのだろう。 取材・文/金平茂紀
---------- 金平茂紀(かねひら しげのり) ジャーナリスト。1953年北海道生まれ。1977年TBS入社。以降、同局で記者、ディレクター、キャスターなど一貫して報道現場を歩む。早稲田大学客員教授など歴任。日本ペンクラブ理事(言論表現委員長)。2004年度「ボーン上田国際記者賞」、2022年度外国特派員協会「報道の自由賞」等受賞。『ロシアより愛をこめて』『沖縄ワジワジー通信』『筑紫哲也NEWS23とその時代』など著書多数。 ----------
金平茂紀