自民党政権を倒すつもりが本当にあるのか…立憲民主党の「政権交代」が絵に描いた餅になりそうな根本原因
■「対等な共闘態勢」はもう古い 「自民党全敗」となった4月28日の衆院3補選は、「全勝」した立憲民主党にとっても今後の課題を考える機会にもなった。立憲は今後、野党としてだけでなく「政権の選択肢」としての評価を厳しく問われることになるが、現状は「戦う構え」すら満足にできていない。 【この記事の画像を見る】 「戦う構え」を作るには、野党が「まとまる」ことが必要だ、と言われてきた。「全ての野党をまとめて『大きな塊』を作れ」「対等で平等な『共闘』態勢を組め」。方向性に差はあるが、野党は常に外野から、こうした圧力を受けてきた。これらは確かに、ある時代までは野党の強化に一定程度機能したが、その戦い方はもう古い。 立憲は「まとまれ」の呪縛から離れ「自力で政権奪取を目指す」姿勢を明確にすべきだ。「孤高で戦え」と言うのではない。下手な候補者調整をするより、立憲が前面に出た方が、むしろ野党陣営は大きくまとまれる、とみるからだ。 ■「共産を切れ」「連合を切れ」と言っている暇はない 立憲は今回の3補選で、すべての選挙区に公認候補を擁立した。これに対し、国民民主党は島根と長崎で候補擁立を見送り、立憲候補を県連レベルで支援した。共産党は島根と東京で候補を取り下げ、長崎を含むすべての選挙区で立憲候補への「自主的支援」を行った。 島根と長崎では、立憲と国民民主、共産、社民という、現状考えうる最も大きな「野党の構え」が出来上がった。連合の芳野会長は島根について「共産党と一緒に戦うことはありえない」と不満を述べたが、それによって現場の態勢が崩れたわけではない。 厚い地盤を誇る自民党との一騎打ちに野党側が勝つには、好むと好まざるとにかかわらず、この枠組みを可能な限り模索せざるを得ない。味方を増やし、敵を減らさねばならない時に「○○を切れ」などと悠長なことを言う暇はないのだ。
■「大きな構え」を阻む連合と共産党の軋轢 東京ではこの枠組みを構築できなかった。9人が立候補した乱戦の中、国民民主は小池百合子東京都知事と組んで無所属候補を推薦し、立憲の公認候補と対決した。 「大きな構え」は崩れたが、乱戦を制して立憲が勝利した。国民民主が離れた分、自主的支援に回った共産党の動きが良く、「構え」の欠落を補った面はあるが、主な勝因は候補者が乱立したことで、候補がいなかった自民党の支持層や無党派層の票が分散したことだろう。この結果、候補者の中では「第1党」であり、組織力もあった立憲に有利な戦いとなった。 自民党が次回、態勢を立て直して候補を擁立した場合、今回の枠組みで勝ちきれるかと言えば、やや心許なさが残る。こちらも「○○のおかげで勝てた」と言える状況にはない。 補選を振り返れば、立憲は国民民主、共産、社民との4党でともに戦う「大きな構え」づくりが急務であるとわかる。それを阻むのが、連合及び国民民主党と、共産党との軋轢だ。 今回の補選でも、野党陣営は大きな勝利を得たにもかかわらず、選挙直後から険のある言葉が飛び交った。連合加盟労組の幹部が今回の勝利で「もう共産に候補者を取り下げてもらう必要はない」と述べた、と毎日新聞に報じられ、こうした声に反発した複数のリベラル系識者などは「立憲がとるべき道は『連合切り』」などといきり立った。 外野の発言とはいえ、こうした応酬は無党派層の立憲への印象を悪化させ、自民党を利することになりかねない。 ■政権交代のための候補者がそもそも足りない 「連合vs共産党」のあつれきを乗り越え、野党が大きくまとまるために、立憲は何をすべきか。それが冒頭に述べた「自力で戦う」ことである。「候補者調整を待たず、自前の候補者を可能な限り擁立する」ということだ。 つまりどういうことか。 「大きな塊」にせよ「市民と野党の共闘」にせよ、これまでの野党の戦術は「立憲が他党と候補者調整をし、選挙区を譲り合って候補者を一本化する」というものだった。一本化というと、野党各党がそれぞれ多数の候補者を立て、多くの選挙区で候補者が競合しているように聞こえるが、実態はその逆だ。候補者が全く足りていない。 立憲は小選挙区で200人、比例単独も含め衆院定数の過半数(233議席)を上回る240人以上の候補擁立を目指しているが、現在の候補予定者は170人あまり。全員が当選しても、単独では政権を担えない。これでは「政権交代」を訴えても、絵に描いた餅である。